方向交代性眼振と外側半規管型良性発作性頭位めまい症

DOI
  • 今井 貴夫
    大阪大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学

書誌事項

タイトル別名
  • Direction-changing Nystagmus and Horizontal Canal Type of Benign Paroxysmal Positional Vertigo

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抄録

方向交代性眼振は周期性方向交代性眼振と頭位性方向交代性眼振に分類される.頭位性方向交代性眼振は中枢性疾患,末梢性疾患の両者にみられるが,そのほとんどは外側半規管型良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo: BPPV)によるものである.BPPVの病態は半規管結石症もしくはクプラ結石症である.半規管結石とは半規管内に存在する耳石(debris)であり,脱落した耳石と考えられている.頭位変換時,半規管結石が外側半規管内を移動することにより,内リンパ流動が生じクプラが偏倚するため,方向交代性下向性眼振が誘発される.内リンパ流動は半規管結石が最下点に到達すると停止するので,眼振の持続時間は短く,数十秒程度である.一方,脱落した耳石(debris)がクプラに付着したものをクプラ結石と呼ぶ.正常なクプラは内リンパ液と同じ比重であるため重力に反応しないが,クプラに結石が付着するとクプラの比重が増加するのでクプラが重力方向に偏倚し,方向交代性上向性眼振を示す.クプラ結石がクプラからはずれ半規管結石になると方向交代性上向性眼振が方向交代性下向性眼振に変化する.方向交代性下向性眼振の持続時間は短いが,持続時間の長い方向交代性下向性眼振を示す症例も存在し,その病態はクプラの比重が軽くなったいわゆるlight cupulaであると考えられている.

収録刊行物

  • 神経眼科

    神経眼科 32 (1), 11-18, 2015

    日本神経眼科学会

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