当院で経験した境界悪性傍卵巣腫瘍の1例

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タイトル別名
  • Paraovarian tumor of borderline malignancy : a case report
  • 症例報告 当院で経験した境界悪性傍卵巣腫瘍の1例
  • ショウレイ ホウコク トウ イン デ ケイケン シタ キョウカイ アクセイ ボウ ランソウ シュヨウ ノ 1レイ

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抄録

傍卵巣腫瘍のほとんどは良性腫瘍で,境界悪性-悪性の頻度は低い.また原発性卵巣腫瘍においては悪性を示唆する腫瘍内部の充実部分の存在も傍卵巣腫瘍では良性腫瘍でもしばしば確認されており,傍卵巣腫瘍における良悪の予測を困難にしている.その治療方法として確立されたものはないが,卵巣腫瘍と同様に取り扱われている.今回われわれは,術前に悪性卵巣腫瘍の可能性を考慮し術中迅速病理診断を行い,一期的に手術を実施できた境界悪性傍卵巣腫瘍の1症例を経験したので報告する.症例は48歳,未経妊.人間ドックで左卵巣腫瘍を指摘され,当科紹介となった.MRI検査にて左付属器領域に約5cmの内部に造影効果のある複数の充実部分を伴う多房性の嚢胞性病変を認め,悪性卵巣腫瘍の可能性を考え開腹手術を実施した.術中,左卵巣近傍の卵管間膜内に鶏卵大の嚢胞性病変を認め,内部には乳頭状結節が多数存在した.術中迅速病理診断はserous borderline tumorであったため,単純子宮全摘出術,両側付属器摘出術,大網部分切除術を実施した.術後診断はparaovarian serous borderline papillary cystic tumorであり,腹水・子宮・両側卵管卵巣・摘出した大網のいずれにも腫瘍性病変や悪性像を認めず,左傍卵巣境界悪性腫瘍stageIaと診断した.術後経過は良好で術後補助化学療法は実施せず,術後6カ月が経過したが明らかな再発所見を認めていない.術前に傍卵巣腫瘍と診断し,さらにその良悪を鑑別することは非常に困難である.付属器腫瘍の内部に造影効果のある充実部分を認めた場合は,非常にまれではあるが境界悪性-悪性の傍卵巣腫瘍である可能性も念頭に置く必要がある.〔産婦の進歩67(2):74-79,2015(平成27年5月)〕

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