血栓塞栓の発生する仕組み

  • 丸山 征郎
    鹿児島大学大学院医歯学総合研究科システム血栓制御学(メディポリス連携医学)

書誌事項

タイトル別名
  • Pathomechanism of Thromboembolism in Atrial Fibrillation

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抄録

人類の歴史は,怪我,飢餓,乏しい塩,感染などとの闘いであったので,これらに対してカスケード(瀑状型)の反応系で装備して生存戦略としてきた.うち怪我に対する止血系は代表的なカスケード反応で,生体は怪我の部位を素早く認識して,その部位だけで凝血系(血小板系と凝固系)を活性化して,素早く「止血」することができる.この凝血系の血管内での誤作動は病的血栓に直結するので,通常は血管内皮細胞が凝血系を制御することで,閉鎖循環系内部での血栓は防止されている.逆に,血管内皮細胞が障害,あるいは消失した部位,すなわち怪我の部位だけで止血が成立する.この内皮細胞の抗血栓は,(1)PGI2, NO, ADPaseによる血小板活性化の防止,(2)トロンボモジュリン(TM),内皮細胞上のヘパリン様分子へのアンチトロンビンとTFPI(tissue factor pathway inhibitor)の結合,(3)t-PAの分泌とプラスミンの生成,など多重な仕組みによってかなえられている.しかし,メタボリック症候群などは血管内皮細胞を慢性的に障害し,病的血栓の原因となる.心内膜も血管内皮細胞と同じ抗血栓活性の機能を有しているが,リズミカルな拍動の消失やメタボリック症候群などによって,心房内が易血栓となってくる.これが心房細動の際の左心房内の血栓である.この場合に左心房内で血液が鬱滞することも,血栓発生に大きな役割を果たす.

収録刊行物

  • 心電図

    心電図 33 (2), 142-147, 2013

    一般社団法人 日本不整脈心電学会

参考文献 (3)*注記

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