ネットワーク・モデリングによるがん細胞コロニーの機能解析:ヘパリンによるネットワーク機能の抑制効果

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  • Functional analysis of metastatic tumor cell colonies by computer modeling of colony-networks: Inhibitory effect of heparin on the network function

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抄録

転移性がん細胞がプラスチック培養面上でコロニーを形成する過程では、細胞同士および細胞と培養面との接着や増殖・移動(浸潤、転移)などのインビトロでの生物学的現象を観察する事ができる。ヘパリンは硫酸基をもつ多糖類であり強い細胞接着効果を持つ1)ので、その結果増殖や移動が抑制されることをコンピュータ・シミュレーションによりすでに明らかにした2)。本研究はコロニー間の機能的相互作用に及ぼすヘパリンの効果をさらに検討するために、ボロノイ(Voronoi)とドローネ(Delaunay)幾何学に基づいたネットワークコミュニケーションを数理モデルに採用した。すなわち、ボロノイは最適配置領域(凸多角形のドメイン;なわ張り)を決定し、それらが隣接するドメイン内コロニー同士をつなげたドローネ三角形からなるネットワークを細胞間相互作用と考え、AGNA(Applied Graphics and Network Analysis)で解析した。その結果、ヘパリン・コロニーはコントロール・コロニーに比べて情報伝達の平均頂点間距離が大きく(それぞれ、1.990、1.846)、頂点次数(それぞれ、4.530、4.750)、クラスター係数(それぞれ、0.498、0.539)とエントロピー(それぞれ、0.964、1.100)はいずれも有意に小さい値を示した。したがって、ヘパリン効果はコロニー同士の相互作用(受容体を介した増殖因子の生理作用)を抑制した。一方コントロール・コロニーは隣接するほど相互作用が大きくなり、次数の高いハブ・コロニーが出現する事が考えられた。

収録刊行物

  • 形態・機能

    形態・機能 12 (1), 2-9, 2013

    コ・メディカル形態機能学会

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