ホルモン補充療法後に部分的に下垂体機能が回復した産褥早期発症のSheehan症候群の1例

書誌事項

タイトル別名
  • A case of Sheehan’s syndrome in early postpartum period presenting partial recovery of pituitary function after immediate steroid replacement therapy
  • 症例報告 ホルモン補充療法後に部分的に下垂体機能が回復した産褥早期発症のSheehan症候群の1例
  • ショウレイ ホウコク ホルモン ホジュウ リョウホウ ゴ ニ ブブンテキ ニ カスイタイ キノウ ガ カイフク シタ サンジョク ソウキ ハッショウ ノ Sheehan ショウコウグン ノ 1レイ

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抄録

Sheehan症候群は,分娩時の大量出血によって下垂体が虚血に陥り,下垂体前葉機能不全もしくは低下をきたして発症する疾患である.本疾患は,これまで分娩後比較的長期間経過してから発症するとされてきたが,今回経腟分娩時の大量出血止血後の産褥早期に,乳汁分泌不全と全身倦怠感で発症したSheehan症候群の1例を経験した.症例は38歳の経産婦で,妊娠37週6日に他院で2420gの女児を経腟分娩したが,分娩後2時間で4300mlの出血を認め当院へ搬送となった.搬送前の採血ではHb 2.8g/dl,Plt 3.6×104/μlであった.来院時JCSII 20-30,血圧は収縮期血圧60mmHg,脈拍120回/分,産科DICスコアは20点で,弛緩出血によるDICと診断した.大量輸血,抗DIC治療を行ったが搬送後30分間で出血量は3500mlに達し,緊急子宮動脈塞栓術を施行し止血を得た.推定総出血量は11480ml,総輸血量はRCC20単位,FFP26単位,濃厚血小板35単位であった.その後,産褥5日目となっても乳汁分泌がほぼなく,産褥8日目より倦怠感を訴えるようになり,軽度のNa低下も認めた.血液検査で下垂体前葉ホルモンおよびコルチゾール・fT3・fT4の低下を認めた.さらにホルモン負荷試験に対して下垂体ホルモンは反応不良で,頭部造影MRIで下垂体前葉の虚血を認めたため,Sheehan症候群の診断に至った.ステロイド内服を開始し,症状は改善し産褥13日目に退院となった.ステロイド内服は産褥5カ月で中止し,その後血中コルチゾール値は正常値となった.甲状腺ホルモンは補充療法を行わなかったが,産褥2カ月ではほぼ正常値となった.現在はカウフマン療法のみを継続中である.Sheehan症候群は,近年産褥早期に発症する症例が散見されるが,早期からホルモン補充療法を行うことで部分的であれ機能が回復する可能性が示唆された.〔産婦の進歩67(3):285-290,2015(平成27年8月)〕

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