ランチョンセミナー3 JAK阻害薬の可能性を考える~基礎と臨床の立場から~

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抄録

関節リウマチは代表的な自己免疫疾患である.治療には,免疫異常を是正して疾患制御することを目的として,生物学的製剤が導入されて画期的な治療変革を齎した.しかし,点滴か注射での使用に限定され,同様の有効性を有する内服可能な低分子量化合物による分子標的薬が期待されてきた.低分子量化合物ならば,細胞内シグナル伝達分子を阻害することも可能となる.病態形成には,細胞内シグナル伝達を介する細胞の活性化・制御が関与するが,その代表がリン酸化酵素キナーゼである.ヒトでは518のキナーゼが同定されるが,大部分のサイトカインシグナルはチロシンキナーゼを介して伝達される.チロシンキナーゼであるJAKを標的とした低分子標的薬トファシチニブは,関節リウマチに平成25年に承認された.6つのグローバル第3相試験で,5または10mgを1日2回経口投与により,MTX治療抵抗性症例,抗リウマチ薬未使用早期症例,TNF阻害薬抵抗性症例において,MTXとの併用あるいは単剤使用でも,TNF阻害薬と同等の迅速で強い臨床効果を示した.一方,有害事象は,感染症,肝機能値異常,脂質代謝異常,好中球減少,貧血等であるが,悪性腫瘍発症の懸念などが議論され,欧州ではリスクとベネフィットのバランスの観点から本薬剤は依然として未承認である.しかし,本薬剤以外にも多様なJAK阻害薬が臨床開発段階にあり,また,リウマチ以外の自己免疫疾患に適応が拡大されようとしている.今後,市販後調査等により長期安全性が確立されれば,新たな治療変革に繋がるものと期待される.

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