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抄録
【背景と目的】長期に罹患した炎症性腸疾患(IBD)は大腸癌を合併し得る.我々は以前,炎症反応の遷延に伴い大腸上皮に発現する2型TNF受容体(TNFR2)が上昇することを報告した.ところがIBD合併大腸癌(colitis-associated cancer, CAC)の発生過程におけるその生物学的意義は明確でない.そこでマウス大腸上皮細胞株と実験CACモデルを用いて,大腸上皮細胞におけるTNFR2シグナルを解析した.【方法と結果】マウス大腸上皮由来細胞株MOC1をrIFN-γで刺激するとTNFR2発現が上昇し,さらにrTNF濃度依存的にNF-κB活性やミオシン軽鎖(MLC)のリン酸化酵素(MLCK)発現が上昇して,細胞間tight junction(TJ)の崩壊が誘導された.これらの現象はTNFR2に対する特異的siRNA,抗TNF抗体MP6-XT22あるいはMLCK阻害剤ML-7によって抑制された.C57BL/6マウスにazoxymethanとdextran sodium sulfateを投与してCACモデルを誘発すると,大腸上皮細胞のTNFR2発現が上昇し,それに相関しNF-κB活性やMLCK,リン酸化MLC発現の上昇,TJ崩壊が見られ,粘膜固有層におけるIL-1β,IL-6,MIP-2といった腫瘍指向性サイトカイン産生が上昇していた.これらのマウスにMP6-XT22やML-7を投与すると,TJ崩壊や腫瘍指向性サイトカイン産生,CACの発生が有意に抑制された.【結論】IBDにおける上皮細胞内のTNFR2発現上昇は,上皮の透過性と腫瘍指向性サイトカインの産生に関連し,CACの発生に深く関与すると推測される.
収録刊行物
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- 日本臨床免疫学会会誌
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日本臨床免疫学会会誌 38 (4), 329a-329a, 2015
日本臨床免疫学会