多剤耐性結核合併妊娠の1例

  • 中村 春樹
    大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター産婦人科
  • 永井 景
    大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター産婦人科
  • 安田 実加
    大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター産婦人科
  • 安川 久吉
    大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター産婦人科
  • 赤田 忍
    大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター産婦人科

書誌事項

タイトル別名
  • A case of pregnancy complicated by multidrug-resistant tuberculosis
  • 症例報告 多剤耐性結核合併妊娠の1例
  • ショウレイ ホウコク タザイ タイセイ ケッカク ガッペイ ニンシン ノ 1レイ

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抄録

近年,結核治療の中心薬剤であるイソニアジド(INH)とリファンピシン(RFP)の2剤に耐性のある多剤耐性結核(Multidrug-Resistant Tuberculosis;以下MDR-TB)が世界で問題となっている.本邦でのMDR-TB合併妊娠の報告は当科からの3例のみである.MDR-TBの治癒率は外科的治療を含めても50~60%と悪く,妊娠中は母体への治療が優先され,そのなかでも薬剤感受性のある胎児にとって安全性の高い抗結核薬を選択する必要がある.今回,MDR-TB治療中に妊娠が判明した1例を経験したので過去の3例と併せて検討,報告する.症例は22歳,初産婦, 他院でMDR-TBと診断されエタンブトール(EB)・ピラジナミド(PZA)・エチオナミド(TH)・パラアミノサリチル酸(PAS)・カナマイシン(KM)・レボフロキサン(LVFX)で治療中に自然妊娠した.当センターへ妊娠7週で紹介後,治療内容はエタンブトール(EB)・ピラジナミド(PZA)・サイクロセリン(CS)・アモキシシリン(AM-PC/CVA)へ変更となり,妊娠17週の時点で排菌は陰性化した.妊娠38週2日に陣痛誘発にて経腟分娩した.児は出生体重1840gの女児で,Apgar score9点(1分値)/10点(5分値)であった.児に外表奇形や先天結核はなく,聴性脳幹反応(ABR)も異常を認めなかった.当センターで以前に経験したMDR-TB合併妊娠の3例は妊娠中にMDR-TBと診断され,いずれもエタンブトール(EB)・ピラジナミド(PZA)・パラアミノサリチル酸(PAS)・サイクロセリン(CS)・アモキシシリン(AM-PC・CVA)が選択された.すべての児に先天奇形や先天結核や胎児発育不全を認めなかった.MDR-TB治療中に妊娠が判明した1例と妊娠中にMDR-TB治療が開始された3例は,抗結核薬による周産期合併症や母体への副作用や児への毒性を認めなかった.〔産婦の進歩67(4):394-399,2015(平成27年10月)〕

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