心血管系疾患におけるNOX1/NADPHオキシダーゼの役割

  • 岩田 和実
    京都府立医科大学大学院 医学研究科 病態分子薬理学

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タイトル別名
  • Differential roles of NOX1/NADPH oxidase derived ROS in cardiovascular disease
  • シンケッカンケイ シッカン ニ オケル NOX1/NADPH オキシダーゼ ノ ヤクワリ

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抄録

活性酸素種(ROS)は種々の心血管系疾患において重要な役割を果たすことが知られている.しかしROSの産生源や作用機構は未だ明らかでない.NADPHオキシダーゼは心血管系組織におけるROS産生酵素の一つであり,本酵素の触媒サブユニットであるNOXには現在7種のサブタイプが存在する.NOX1は誘導型のサブタイプとして近年心血管系疾患への関与が明らかとなってきた.本稿では心血管系組織におけるNOX1の役割をNOX1遺伝子欠損マウス(NOX1-KO)から得られた実験結果を中心に解説する.アンジオテンシンⅡ(AngII)の持続投与による高血圧症モデルでは,NOX1欠損により血圧上昇の抑制が認められた.大動脈においてAngIIにより誘導されたNOX1由来のROSは一酸化窒素のバイオアベイラビリティを低下させて収縮反応を促進することが示された.リポポリサッカライド(LPS)による敗血症モデルではLPS投与数時間後に心臓でNOX1が強く発現誘導され,心筋細胞のアポトーシスを促進した.一方,アントラサイクリン系抗腫瘍薬のドキソルビシンは投与数日後の遅いピークで心臓のNOX1発現を誘導したが,その程度はLPSと比較して軽度であり,心筋細胞のアポトーシスには影響しなかった.しかし誘導されたNOX1は心臓の炎症性サイトカイン発現と線維化を促進した.他方,著者らは偶然にNOX1-KOの肺動脈が肥厚していることに気付いた.その機序を解析したところ,NOX1の欠損は肺動脈平滑筋細胞における電位依存性カリウムチャネルKv1.5タンパク質の発現を減少させ,アポトーシスを抑制することで平滑筋細胞のターンオーバーが低下したためであることがわかった.心血管系組織においてNOX1由来ROSは発現組織や時期により疾患増悪因子あるいは保護因子として多面的な役割を有することが明らかとなった.

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