<i>Streptococcus mutans</i>と<i>Porphyromonas gingivalis</i>のpHと成長にグルコース濃度が及ぼす影響

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  • Effect of Glucose Concentration on the pH and Growth of <i>Streptococcus mutans</i> and <i>Porphyromonas gingivalis</i>

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抄録

 目的 : 口腔環境は栄養, pH, 酸素濃度が随時変化して, これらの要因は口腔内細菌の異種間競争と抑制に大きく影響している. また糖尿病患者では, 通常血糖値の者と比較して重度歯周炎になるという報告が散見される. しかし, 糖尿病患者における, すなわち高グルコース濃度が複合コロニーに与える影響についての報告は少ない. 慢性歯周炎は主に歯周病原細菌の一つであるPorphyromonas gingivalisが関与しているが, P. gingivalisは単体での歯表面への強固な接着能を有していないことから, コロニー形成初期に必要となる歯表面への接着能に優れたStreptcoccus mutansのような菌の存在が重要である. 本研究では, 高血糖モデルのグルコース濃度がS. mutansP. gingivalisの単一培養もしくは共培養のコロニー形成に及ぼす影響について評価した. <br> 材料と方法 : 試供菌株としてS. mutans (ATCC 25175), P. gingivalis (ATCC 33277) を用いた. 各菌の48時間培養液を吸光度600nmの分光度が0.3になるように調整し, グルコース濃度 (5.5, 8, 12, 24mmol/l) に調整したBHI培地にて, S. mutans単一培養, P. gingivalis単一培養, S. mutansP. gingivalis共培養を48時間行い, その後の培地内のpHと細菌増殖について評価した. <br> 結果 : 高グルコース環境下で, S. mutans単一培養では培地内pHの著明な低下と細胞増殖を示した. しかし, P. gingivalis単一培養では培地内pHと増殖の変化は認めなかった. 共培養条件下では, 両細菌単一培養時に比べて細菌数は増加したが, グルコース濃度が上がるにつれて増殖は抑制された. <br> 結論 : 糖尿病患者では免疫能低下・易感染性のため急性炎症を生じやすい. しかしながら, 口腔内細菌に関してコロニー形成能は増強されるが, 慢性歯周炎の原因菌の一つであるP. gingivalisの活動性の著明な増加は認めなかった. 重篤な糖尿病患者では, 多菌種が存在する口腔内において口腔内細菌数が増加せず, 慢性歯周炎原因細菌P. gingivalisは減少する可能性を示唆した. つまり, 糖尿病患者における慢性歯周炎は, 細菌因子より宿主因子のほうが大きく関与しているのではないかと推測される.

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