がんと脳梗塞―トルーソー症候群の臨床

  • 野川 茂
    東海大学医学部付属八王子病院 神経内科

書誌事項

タイトル別名
  • Cancer-associated stroke—Clinical management of Trousseau's syndrome

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抄録

要約:トルーソー症候群は「悪性腫瘍に合併する凝固能亢進状態とそれに伴う遊走性血栓性静脈炎」をさすが,脳梗塞の発症を機に初めて悪性腫瘍が発見されることも少なくない.このため,本邦では「悪性腫瘍に合併するDIC に伴う血栓症および非細菌性血栓性心内膜炎(NBTE)に起因する全身性(とくに脳)塞栓症」として理解されつつある.原因となる悪性腫瘍は,白血病を除けば,肺癌,膵癌,胃癌,卵巣癌(ムチン産生腫瘍)などの腺癌が圧倒的に多い.頭部MRI では多発性塞栓症を呈することが多く,約半数にNBTE が認められるが,経胸壁心エコーでの検出率は低く,経食道心エコーが診断に有用である.また,CA125 やCA19-9 などの高分子ムチンが,腫瘍マーカーあるいは塞栓形成物質として注目されている.治療では,ワルファリンの効果は不確実とされ,出血がコントロールされていれば,未分画ヘパリン静注やヘパリンカルシウム皮下注が用いられる.

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