天然物をヒントにした経口吸収性マクロサイクル

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抄録

近年,細胞内タンパク‐タンパク相互作用を阻害する薬剤の必要性増大に伴い,かつては“非ドラッガブル”と考えられていた,Lipinskiの “rule of five” から外れた化合物群が着目されている.しかしながら,非侵襲的な投与で高い生体内利用率(F)を獲得するペプチド分子のデザインについては成果が乏しい現状にあるなど,課題も今なお多い.最近,Hewittらは,天然環状ペプチドのシクロスポリンAが分子量1202の非低分子でありながら受動拡散によって膜を透過して経口吸収性(F:29 % in rat)を示すことをヒントに,環状ヘキサペプチドライブラリーから膜透過性を有するものを探索し,その構造解析結果を報告している.ここでは,主鎖を構成するアミノ酸の立体化学とN‐メチル化により,分子内に存在するNHグループをマクロサイクルの内部へと配置させて溶媒から遠ざけることが高い膜透過性に寄与することが示唆された.<br>今回,Bockusらは,Hewittらの知見を活用し,より薬物動態特性の向上を意識したハイブリッド環状ペプチド設計を行った結果,シクロスポリンAと同等の生体内利用率を示すマクロサイクルを得たので,その内容を紹介する.<br>なお、本稿は下記の文献に基づいて、その研究成果を紹介するものである。<br>1) Hewitt W. M. et al., J. Am. Chem. Soc., 137, 715-721 (2015).<br>2) Bockus A. T. et al., J. Med. Chem., 58, 4581-4589 (2015).<br>3) Hagihara M. et al., J. Am. Chem. Soc., 114, 6568-6570 (1992).

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 52 (2), 175-175, 2016

    公益社団法人 日本薬学会

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