軟口蓋発生メカニズムの解明

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  • 岡 暁子
    福岡歯科大学成長発達歯学講座成育小児歯科学分野

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タイトル別名
  • Mechanism of Soft Palate Development

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抄録

口蓋裂は,高頻度で発症する顔面奇形である。口蓋裂を伴って出生すると,哺乳障害に始まり咀嚼および発音機能,審美性の回復など様々なハードルを超えなくてはならない。治療は複雑で長期に及ぶため,各ステップで臨床専門家によるチームアプローチが必至である。我々小児歯科医は,このチームの一員として大変重要な立場にいる。一方で,口蓋裂という疾患を考えるとき,この疾患の病因を明らかにする基礎的研究もまた,忘れてはならない。ヒトにおける口蓋裂の裂形は,完全口蓋裂・口唇裂や歯槽裂を伴うもの,軟口蓋裂でも粘膜下口蓋裂や二分垂裂など多様である。我々は,ヒト口蓋裂疾患の中でも,軟口蓋裂発症メカニズムの解明を目的とし,特に軟口蓋発生に着目して解析を行ってきた。口蓋発生初期には,口蓋間葉は神経堤細胞によって形成されている。軟口蓋領域には遅れて,中胚葉由来の骨格筋細胞が遊走し,2 つの細胞間相互作用によって口蓋筋群が形成される。我々は,まず,軟口蓋領域に特徴的に発現する遺伝子を網羅的に解析するため,口蓋組織前後でのマイクロアレイによる比較解析を施行した。その中から細胞外基質であるPeriostin に着目し,組織学的な発現解析を行い,軟口蓋領域の神経堤細胞には,Periostin の発現が特徴的に発現していること,またこの発現は,TGF-β シグナルによって制御されていることを明らかとした。

収録刊行物

  • 小児歯科学雑誌

    小児歯科学雑誌 53 (1), 16-21, 2015

    一般財団法人 日本小児歯科学会

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