メタボリックシンドロームに対する治療ターゲットとしての脂肪酸受容体

  • 平澤 明
    京都大学大学院 薬学研究科 薬理ゲノミクス分野
  • 竹内 理人
    京都大学大学院 薬学研究科 薬理ゲノミクス分野
  • 白井 遼平
    京都大学大学院 薬学研究科 薬理ゲノミクス分野
  • 陳 藻
    京都大学大学院 薬学研究科 薬理ゲノミクス分野
  • 石井 翔太
    京都大学大学院 薬学研究科 薬理ゲノミクス分野
  • 飯田 桂子
    京都大学大学院 薬学研究科 薬理ゲノミクス分野

書誌事項

タイトル別名
  • Free fatty acid receptors as therapeutic targets for metabolic disorders
  • メタボリックシンドローム ニ タイスル チリョウ ターゲット ト シテ ノ シボウサン ジュヨウタイ

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抄録

オーファン受容体のリガンド探索研究により,Gタンパク質共役型の遊離脂肪酸受容体のファミリー(FFAR1,FFAR2,FFAR3,FFAR4,GPR84)が見出された.この脂肪酸受容体は,短鎖から長鎖までの鎖長の脂肪酸を識別し,様々な臓器で生理機能を果たすセンサ分子群であることが明らかになりつつある.その中で,FFAR1(GPR40),FFAR4(GPR120)は,どちらも長鎖不飽和の遊離脂肪酸を内因性のリガンドとする受容体であり,FFAR1は,膵臓でのインスリン分泌に,FFAR4は腸管でのインクレチン分泌および脂肪組織の制御など,代謝調節に重要な役割を果たすことが明らかになっている.FFAR1とFFAR4の内因性リガンドの類似性を考えると,選択性を有する化合物の探索は,受容体の生理機能解析のツールとして重要である.我々は,ホモロジーモデリングにドッキングシミュレーションと部位特異的変異導入を組み合わせて用いることで,化合物の親和性を予測し,新規の選択性を有する化合物を得るとともに,リガンドと受容体の結合に重要なアミノ酸残基の同定に成功している.また,各種摂餌条件下で,脂肪酸受容体遺伝子欠損マウス臓器の発現プロファイルを遺伝子オントロジーを用いて解析することで,代謝調節に関する役割を検討した.現在,FFAR1に対するアゴニストは糖尿病に対する医薬品として開発段階に進んでおり,FFAR4に関しても肥満,糖尿病などの代謝疾患に対する薬物標的となる可能性が示されている.本稿では,遊離脂肪酸センサとしてのFFAR1,FFAR4研究の現状と創薬応用の可能性について,我々のFFAR4に関する知見を含めて紹介する.

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 146 (6), 296-301, 2015

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (40)*注記

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