タルクによる胸膜癒着術を施行した悪性胸水26症例の臨床的検討

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タイトル別名
  • Twenty-six Cases of Talc Pleurodesis for Malignant Pleural Effusions

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抄録

背景.悪性胸水に対する胸膜癒着術において,海外ではタルクは標準治療である.本邦では2013年12月に発売された.日本人を対象とした検討はまだ少ない.目的.タルクによる胸膜癒着術の有効性と安全性,効果のリスク因子及び予後を検討すること.方法.2014年1月から2015年3月までにタルクによる胸膜癒着術を行った悪水胸水症例26例を,後方視的に検討した.投与法は全例Slurry法を用いた.有効性は国内第II相試験に準じて評価した.効果のリスク因子及び予後の検討では,死亡及び追跡不能例も無効群に加えた.最終投与症例の投与日から1カ月後を観察期間終了とした.結果.全26例のうち,死亡及び追跡不能例を除いた20例中16例が有効(80%)であった.発熱を26例中10例(38%)に認めたが,その他の重大な有害事象は認めなかった.効果のリスク因子の検討では,Performance Status(PS)不良及び低アルブミン(Alb)血症例で統計学的有意差を認め,宿主の全身状態不良は効果のリスク因子であった.PSと血清Alb値について,予後の追検討を行った.ROC曲線を用いたカットオフ値で各々2群に分けると,PS不良及び低Alb血症群は有意に予後不良であった.結論.今回の検討では,悪性胸水症例に対するタルクによる胸膜癒着術の有効性及び安全性に関しては既報に沿った結果であった.全身状態不良な症例について,施術が奏効しない可能性が示唆され,予後不良であった.投与の是非は症例の全身状態を鑑みて検討すべきである.

収録刊行物

  • 気管支学

    気管支学 38 (1), 6-11, 2016

    特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会

被引用文献 (1)*注記

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