中海柱状堆積物に記録された重金属汚染の歴史トレンド解析

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タイトル別名
  • Analysis of Historical Trend of Heavy Metal Pollution Recorded in a Sediment Core From Lake Nakaumi, Japan
  • ナカノウミ チュウジョウ タイセキブツ ニ キロク サレタ ジュウキンゾク オセン ノ レキシ トレンド カイセキ

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抄録

本研究では,日本海に面する中海(島根県・鳥取県)における過去約100年間の重金属汚染の変遷とその要因を明らかにするため,湖心で採取された柱状堆積物中の重金属濃度(Cd,Co,Cr,Cu,Mo,Ni,Pb,Sb,V,Znの計10元素)とPb同位体比(207Pb/206Pb,208Pb/206Pb)を測定した。堆積物の年代は,湖心においてPb-210法で測定された既存の堆積速度の値を利用して推定された。重金属濃度の鉛直分布から,Cu,Pb,Zn汚染は1890-1900年代,Co,Cr,Mo,Ni,V汚染は1950年代からそれぞれ始まり,それらの汚染には中海周辺における人間活動(鉱業や金属工業)が関与していることがわかった。次にPb濃度とPb同位体比を基に2成分エンドメンバーモデルを適用して,1900年代以降に人為的に付加されたPbの同位体比(207Pb/206Pb,208Pb/206Pb)を推定することにより,Pbの主要発生源を評価した。その結果,1900-1930年代は日本産鉛鉱石(宝満山鉱山)を起源とする鉱山排水,1940-1980年代は外国産鉛鉱石(鉛製錬)と有鉛ガソリン(自動車)を起源とする大気エアロゾル,1990-2000年代はアジア大陸の人為発生源から輸送された大気エアロゾルがそれぞれ寄与している可能性が高い。さらに,2000年における堆積物中のPb濃度の増加分は全てアジア大陸起源と仮定し,1999-2001年に島根県松江市で得られた既存の降水データを用いてCd,Sb,Znの濃度増加に対するアジア大陸の寄与を評価した。その結果,Cd,SbはPbと同様にアジア大陸の寄与が大きく,Znは小さいことが示唆された。

収録刊行物

  • 環境科学会誌

    環境科学会誌 28 (2), 162-175, 2015

    社団法人 環境科学会

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