褥瘡対策未実施減算政策導入に係る諸研究の総括

書誌事項

タイトル別名
  • Generalization of Many Studies on the Introduction of Bedsore Preventive Measures

抄録

褥瘡は治り難いもの,そして治し難いもの,然し予防できるものと言うことは多くの症例を扱ってきた医療者は知っていた。それを科学的根拠に基づいて学会に提言したのは1960年代の半ば頃からであった。著者はロダンアンモン発色方で1),2),KOSIAKはバルーンによる圧力測定を根拠にほぼ同じ結果を報告している3)。褥瘡,床擦れと言われた100年前より発生原因,物理学的対策,薬物学的対策について多くの研究が成され,病理学的な特性,生化学的特性に関する病態についても判明した事実は多い4),5),6),7),8),9),10),11),12),13),14),15),16),17),18)。褥瘡の発生機序,組織学的変化などに関する報告は多くの学術雑誌に見られたが,褥瘡についての知識の普及に反し,予防すれば予防可能である筈の褥瘡患者の数の減少する気配は一向に薄く,厚生労働省も健康保険点数に於いて未対策の医療機関の入院患者に対する減点政策を採るに至った。更に2年後の改正時に予防対策を前提とした入院点数を付するに至っている。然し,褥瘡管理が行き届かぬ医療機関に対し,健康保険点数減算措置がとられた後に,医療機関は本腰を入れて予防に力を投入するところとなった結果,行政は素早く減算措置から予防体制を整えた医療機関に保険点数の加算を行う所となった。我々研究班は,予防の至らぬ点を憂い,現状を究めて解決策を得んと意図し,長年にわたり啓発に努めてきた所であるが,平成17-18年文部科学省科研費19)と平成18-19年財団法人テクノエイド協会研究助成金20)により,予防効果に関する研究に従事した。その利用器具開発,研究手法,内容,結果の詳細は,長岡ら21),滝沢ら22),村上ら23)が報告している。特に長岡は, 長岡病院グループはKOSIAKの提唱する徐圧による予防の効果を立証し,「コジャックの法則(局所圧力200mmHg以下・2時間以内の体位変換)に則して,体位変換を実施すれば褥瘡の発生を見ない」を実現した病院の状況について報告した24),25)。しかし,一般の医療機関に於いては40年来学会等を介して我々が褥瘡の弊害と予防の可能なことを提唱してきたことが殆どの医療機関では生かされてこなかった実態がある。本稿では以下,実施したアンケート調査から,政策として,褥瘡対策未実施減算導入がどのような影響を与えたかを述べる。著者を含め,直接データ採集に関わった本研究グループを構成するメンバーは次に挙げる医療機関及び人員による。平成17-18年度文部科学省科研研究:(当時) 木村哲彦(国際医療福祉大学・大学院・教授),滝沢茂男(リハビリエイド有限会社・バイオフィリア研究所・研究員),長岡健太郎(医療法人湘南健友会長岡病院・診療科・理事長),牛澤賢二(産能大学・経営情報学部・教授),山下和彦(東京電機大学・工学部情報メディア学科・ポスドク),森田能子(川崎病院・リハビリテーション科・部長),村尾俊明(財団法人テクノエイド協会・常務理事)平成18-19年度財団法人テクノエイド協会研究:(当時) 木村哲彦(前出),滝沢茂男(バイオフィリア研究所有限会社・研究所長),森田能子(前出),岡本雄三(医療法人帰厳会岡本病院 院長),長岡健太郎(前出),長澤弘(神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科・教授),牛澤賢二(前出),川合秀治(社団法人全国老人保健施設協会副会長),和田里佳(立花整形外科通所リハビリテーションセンター・所長),白澤卓二(東京都老人総合研究所分子老化研究グループ・研究部長),塚田邦夫(高岡駅南クリニック院長),足立かおる(岡本病院副院長),村上亜紀(湘南看護専門学校専任教員),高田一(横浜国立大学教授)

収録刊行物

  • BIOPHILIA

    BIOPHILIA 2015 (2), 195-206, 2015

    特定非営利活動法人 高齢市民が活躍するための社会技術研究会

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