精神・神経疾患に対するグルタミン酸トランスポーター活性薬の将来性

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抄録

グルタミン酸は,中枢神経系で主要な興奮性神経伝達物質の1つである.グルタミン酸は,前シナプス終末から放出され,シナプス間隙を拡散し,受容体に結合する.このシナプス伝達は,グルタミン酸トランスポーター(excitatory amino acid transporters:EAATs)によるグルタミン酸の細胞内への取り込みにより終了する.現在までに5種類のEAATs(EAAT1―5)が同定されており,前脳ではEAAT2が最も多く発現している.EAAT2は,グリア細胞の1つであるアストロサイトに発現し,シナプス間隙で90%のグルタミン酸の取り込みに寄与している.つまり,EAAT2の発現減少によるグルタミン酸シグナルの増強は,興奮毒性によるダメージを細胞に与えるため,うつ病などの疾患に影響をおよぼす.本稿では,即効性の抗うつ薬として期待されるケタミンが,慢性ストレスにより減少したEAAT2発現を回復させることを報告したLiuらの論文について紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Fontana A. C., J. Neurochem., 134, 982-1007 (2015).<br>2) Liu W. X. et al., Psychopharmacology, 233, 405-415 (2016).<br>3) Sanacora G., Banasr M., Biol. Psychiatry, 73, 1172-1179 (2013).<br>4) John C. S. et al., Neuropsychopharmacology, 40, 1700-1708 (2015).

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 52 (6), 562-562, 2016

    公益社団法人 日本薬学会

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