絨毛性疾患との鑑別を要した子宮漿膜下腹膜妊娠の1例

書誌事項

タイトル別名
  • A case of an ectopic pregnancy that occurred in the uterine subserosa, which had to distinguish from trophoblastic disease
  • 症例報告 絨毛性疾患との鑑別を要した子宮漿膜下腹膜妊娠の1例
  • ショウレイ ホウコク ジュウモウセイ シッカン ト ノ カンベツ オ ヨウシタ シキュウショウマク シタハラマク ニンシン ノ 1レイ

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抄録

腹膜妊娠は非常にまれな疾患であるが,他の異所性妊娠と比較して初期の症状に乏しく早期診断が困難である.今回われわれは近医で流産と診断された後のフォローアップ中に尿中hCG値上昇を認めたため紹介された,子宮後壁漿膜に着床した腹膜妊娠の1例を経験した.症例は30歳の1回経産婦で,最終月経より8週6日に子宮口より脱落膜様の組織排出を認め,不全流産の診断の下,子宮内容除去術が行われた.しかし,その後も性器出血が継続し,尿中hCG値の上昇(1092 mIU/mlから9日間で3224 mIU/ml)を認めたため当院紹介となった.当院初診時,超音波検査で子宮後壁に約2cmの嚢腫様病変を認め,この部位はカラードップラー法で豊富な血流を認め,造影CT検査でもこの腫瘤壁に沿って動脈相早期より造影された.MRI検査ではT2強調画像にて高信号を示す腫瘤を認めたが,はっきりした胎嚢像は認めなかった.そのため,臨床的侵入奇胎あるいは異所性妊娠の両方の可能性を考え,初診時点で性器出血症状を認めず,超音波検査でDouglas窩に腹腔内出血を疑う所見も認めないことから,保存的に化学療法を行う方針とした.15週2日よりMethotrexate(MTX) 17.5 mg/body×5日間の治療を行ったが,口内炎,消化器症状などの副作用が強く出現し,また腫瘤も軽微ながら増大傾向を認め,血中hCG値も上昇したため,開腹手術による治療へ切り替えた.16週6日に開腹手術を行い,周囲筋層を含めた腫瘤の摘出術を行った.摘出病理では化学療法治療修飾によると考えられる変性を認めたため判断に苦慮したが,中間型栄養膜細胞が主体であり有意な筋層浸潤を認めないこと,および臨床経過と血中hCG値の推移の状況も考え合わせ異所性妊娠と診断した.術後血中hCG値はしだいに低下し,術後3カ月に子宮卵管造影を行ったところ両側卵管通過性に異常を認めなかった.〔産婦の進歩68(2):112-117,2016(平成28年5月)〕

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