卵巣癌と子宮内膜癌の異時性重複癌に対して妊孕性温存療法後,妊娠・分娩に至った1例

書誌事項

タイトル別名
  • Fertility-sparing treatment for heterochronous primary ovarian and endometrial cancer that resulted in pregnancy and normal delivery: a case report
  • 症例報告 卵巣癌と子宮内膜癌の異時性重複癌に対して妊孕性温存療法後,妊娠・分娩に至った1例
  • ショウレイ ホウコク ランソウ ガン ト シキュウ ナイマク ガン ノ イジセイ チョウフクガン ニ タイシテ ニンヨウセイ オンゾン リョウホウ ゴ,ニンシン ・ ブンベン ニ イタッタ 1レイ

この論文をさがす

抄録

卵巣癌と子宮内膜癌は若年者において合併しやすいとされている.今回,両者の異時性重複癌に対して妊孕性温存療法後,妊娠・分娩に至った1例を経験した.症例は33歳,既婚,未経妊,家族歴として,兄が白血病に15歳時に罹患し16歳で原疾患死,伯父が大腸癌,祖父が胃癌を罹患していた.28歳時,前医で卵巣癌Ia期(類内膜腺癌,grade 2)に対して,左付属器切除+右卵巣部分切除+骨盤リンパ節郭清術,ならびに術後初回化学療法としてpaclitaxel・carboplatin併用療法6コースを受けていた.治療終了直後より不妊治療を開始したが,4年4カ月後,子宮頸管ポリープを切除したところ類内膜腺癌(Grade 1)が判明した.強い妊孕性温存希望があり,精査治療目的で当院に紹介受診となる.MRIでは病巣は明らかではなかったが,内膜全面掻爬にて子宮内膜癌(類内膜腺癌Grade 1)と診断した.高用量黄体ホルモン療法を6カ月間実施しCRとなる.2カ月後に顕微授精・胚移植にて妊娠成立し,妊娠38週で自然経腟分娩に至った.分娩後1年3カ月で断乳するも月経再開せず,ホルムストルム療法を行っている.現在,分娩後2年9カ月経過しているが再発徴候は認めていない.本例は第2子の希望があるが,分娩後も子宮内膜癌再発の可能性があることに加え,卵巣癌再発ならびに残存卵巣の新規発癌の可能性も通常よりも高いことが想定され,また卵巣癌早期発見のスクリーニング検査法も確立していないことから,標準的治療である単純子宮全摘術+右付属器切除術を受けるよう強く勧めている.〔産婦の進歩68(2):126-130,2016(平成28年5月)〕

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ