温度制御下でのマイクロチャネル乳化により調製した単分散油中水滴エマルションからの均一径寒天ゲルマイクロビーズの作製

  • 黒岩 崇
    東京都市大学工学部エネルギー化学科 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所食品工学研究領域
  • 勝又 徹
    東京都市大学工学部エネルギー化学科
  • 助田 義一
    東京都市大学工学部エネルギー化学科
  • 藁科 晶斗
    東京都市大学工学部エネルギー化学科
  • 小林 功
    国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所食品工学研究領域
  • 植村 邦彦
    国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所食品工学研究領域
  • 金澤 昭彦
    東京都市大学工学部エネルギー化学科

書誌事項

タイトル別名
  • Formulation of Uniform-sized Agar Gel Microbeads from Water-in-oil Emulsion Prepared Using Microchannel Emulsification under Controlled Temperature

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抄録

寒天およびその主成分であるアガロースのゲルビーズは,食品機能成分,薬理成分および各種細胞の包括担体として,またクロマトグラフィ用の分離担体として様々な分野で利用されている.内包物質の放出性,内包細胞への栄養や酸素の供給,およびクロマトグラフィにおける分離性能は,ゲルビーズの粒径の影響を受け,とくに微小かつ均一なゲルビーズの作製が望まれる.しかしながら,平均粒径が50μmより小さく,かつ粒径の均一性の高い寒天ゲルビーズの作製は難しく,効率的な生産につながる手法は確立されていない.<br>筆者らは,均一性の高い寒天ゲルビーズの作製方法として,マイクロチャネル(MC)乳化法により作製した単分散油中水滴(W/O)エマルションを利用する方法を検討した.すなわち,ゲル化温度以上に保温した寒天水溶液を,乳化剤を含む有機溶媒中にMCを介して圧入することで,液滴径のそろったW/Oエマルションを作製し,これをゲル化温度以下に冷却することで均一径寒天ゲルビーズを作製することを試みた.MC乳化法は,低剪断場で直径数μm~数百μmの単分散液滴を作製でき,乳化プロセスにおける発熱もほとんどないため,酵素をはじめとする生理活性タンパク質や細胞の内包化にも適していると考えられる.<br>本研究では,3種類の異なるMC構造を有する平板溝型シリコン製MC基板を使用した.まず,分散相である寒天水溶液への食塩(NaCl)の添加効果について調べた.MC乳化により寒天含有液滴を均一に作製するためには,十分な浸透圧を付与するための分散相へのNaClの添加が必須であった.0.2 MのNaClを含む1 wt%寒天水溶液を分散相,5 wt%のSpan 85(ソルビタントリオレエート)を乳化剤として含むイソオクタン溶液を連続相とした場合に,3種のMC基板を用いて平均液滴径15~34μm,変動係数(CV)10%以下の均一径W/Oエマルションを作製することができた.さらに,得られたエマルションを室温まで冷却することで,均一な粒径をもつ寒天ゲルビーズを作製できることを示した.MCからの液滴形成挙動をハイスピードカメラにより解析した結果,単一のMCから毎秒数個~二十個程度の液滴が形成されていることがわかった.適切な条件下では,MC基板に分散相が付着することなくスムーズに液滴が形成する様子が観察された.<br>続いて,乳化挙動に及ぼす寒天濃度および温度の影響を調べた.寒天濃度0.5~2.0 wt%の範囲で,単分散または準単分散な寒天含有液滴を作製することができた.寒天濃度1 wt%の場合,40℃よりも低い乳化温度では均一な液滴の形成が可能であったものの,一部のMCで分散相による閉塞が認められた.このときの寒天水溶液のゲル化温度は約41℃であったことから,安定な乳化を行うためには分散相がゲル化しない温度での操作が望ましいことがわかった.40~50℃の温度帯では変動係数10%未満の均一径液滴を作製することができた.一方,50℃以上では,形成した液滴が直ちに合一することにより大きな液滴となり,液滴径は多分散化することが示された.以上の検討により,寒天濃度0.5~2.0 wt%,温度40~50℃の範囲でMC乳化を行うことで,均一性の高い寒天含有W/Oエマルションを作製できることが明らかとなった.

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参考文献 (32)*注記

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