学習の模倣と指示の再現が苦手な子どもが,ロフストランド杖歩行自立となった一例

DOI

抄録

【目的】学習の模倣と指示の再現が苦手な子どもに対して,従来の手足を振り出す順番を覚える練習ではなく,順番はバラバラでもバランスを崩さずに歩く練習をしたところ,杖歩行が自立したという運動学習の点で貴重な経験を得たので報告する。【症例提示】脳性麻痺をもつ男児。GMFCSレベルIII。4歳6か月時点の田中ビネー式知能検査Vは,精神年齢が2歳9か月,IQが61で,言葉による指示理解や順序の記憶が不通過であった。股関節の亜脱臼が進行し,PCW歩行でのはさみ足も顕著となったので,下肢の多部位同時手術のため入所した(入所時5歳3か月)。入所時のフロスティッグ視知覚発達検査は,視覚と運動の協応が3歳6か月,空間関係が3歳8か月で,道具の操作や空間関係を捉えることが苦手であった。【経過と考察】手術翌日より理学療法を開始した。術後27日目よりPCW歩行と手放し立位の練習を開始した。術後34日目には見守りでPCW歩行が可能となり,ロフストランド杖立位練習を開始した。その後手放し立位が30秒程,杖立位が1分程可能となった。術後70日目より理学療法士が杖を介助しながら声掛けを行う4点交互歩行の練習を開始した。しかし,なかなか順番どおりに手足を振り出せず,杖歩行に対するモチベーションも下がり始めた。そこで支持基底面の前方へのシフトが“移動”だと考え,術後87日目より手足の順番はバラバラでもバランスを崩さずに前へ進むように指示を改めた。その結果,術後106日目にほぼ順番を間違えずに4点交互歩行が可能となった。意味もわからず手足の四つの順番を記憶し再現するのは困難で,一方,バランスを崩さずに手足をひとつ動かすのは容易な課題であったと考える。容易な課題の繰り返しで学習が強化され移動できるようになり,それが歩ける自信を生み,杖歩行の自立につながったと考える。最終的に4点交互歩行に落ち着いたのは,この歩き方が安定した歩行効率のよい歩き方であったためと考える。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680551097216
  • NII論文ID
    130005248182
  • DOI
    10.14900/cjpt.2014.0505
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ