悪性リンパ腫の中枢神経浸潤による歩行障害から,屋外歩行能力獲得に至った2症例

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抄録

【目的】稀な悪性リンパ腫の脊髄浸潤により歩行不能となった2症例の理学療法を経験した。歩行障害は筋力低下に加え,深部感覚障害が強く認められていた。合併症予防に配慮して理学療法を行い,屋外歩行能力の獲得に至った経過について報告する。【症例提示】症例1,55歳男性。下肢痛と脱力を自覚し,前医で血管内リンパ腫の診断を受け,その後,下肢の感覚障害と全身倦怠感の増悪を認め歩行不能となり,当院血液内科へ転入院され,化学療法,髄腔内化学療法を開始し,理学療法は化学療法開始6病日より開始となる。開始時,L3以下での異常知覚,MMT3レベルの筋力低下に加え,深部感覚消失による下肢協調性障害を認め,下肢筋力・協調性練習を開始した。14病日で筋力はMMT4レベルに回復したが,深部感覚は低下しており,歩行には歩行器が必要な状況であった。50病日で深部感覚は概ね回復し,屋外歩行能力の獲得に至った。症例2,55歳男性,2年前に再発非ホジキンリンパ腫に対して,自家末梢血造血幹細胞移植後,寛解を得て外来通院中であった。急激な腰背部痛と体幹下肢感覚障害により起坐困難となり,MR画像で胸髄と馬尾に多数の腫瘍病変を認め再々発の診断となった。入院直後の髄腔内化学療法にて腰背部痛は改善し坐位可能となったが,体幹下肢失調症状により起立困難なため化学療法,放射線治療とともに髄腔内化学療法6病日より理学療法も開始。開始時,体幹下肢筋力はMMT4~5程度であったが,Th4高位以下での表在・深部感覚障害を認め起立困難な状況であった。協調性練習中心とした理学療法を行い,14病日で歩行器歩行,90病日で屋外歩行可能となった。【経過と考察】2症例とも筋力低下より深部感覚障害が問題であった。早期に理学療法を開始し,適切な化学療法中の合併症対策を行えたことにより,廃用性の筋力低下を起こすことなく,協調性練習や歩行練習を実施できたことが屋外歩行能力の獲得に至ったと考えられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680553376640
  • NII論文ID
    130005248306
  • DOI
    10.14900/cjpt.2014.0540
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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