ネコ咬傷の3例

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Three Cases of a Cat Bite

この論文をさがす

抄録

症例1:40歳代,女性。6日前に左手第2指を飼いネコに咬まれ,発赤・腫脹が出現した。翌日近医でセフカペンピボキシル塩酸塩を処方されたが,増悪したため5日後に当科を紹介された。近医での一般細菌培養検査結果は Pasteurella sp.(1+),Bacillus cereus(1+)であったため,両菌に対して感受性を有していたレボフロキサシンを16日間投与した。その後一時軽快したが,2週後に発赤部に波動を触知し,咬傷部に過剰肉芽を伴う潰瘍が出現した。MRI 所見から化膿性関節炎,急性骨髄炎と診断し,緊急デブリドマン,創外固定術が施行された。症例2:70歳代,女性。右手第2指をボランティアで世話をしているネコに咬まれた。近医で処方されたファロペネムナトリウム水和物で一時軽快したが,3日後に発赤・腫脹が再燃したため当科を紹介された。症例3:40歳代,女性。右手関節部,左手第2指を飼いネコに咬まれた後に発赤・腫脹が出現したため,翌日当科を受診した。病変部の細菌培養結果は Pasteurella multocida(2+)であった。症例2,3はいずれもアンピシリン投与により短期間で軽快した。ネコの歯はイヌに比して細く尖っているため,創口が小さく閉創しやすい。このために嫌気的環境を形成し,深部での感染がおこりやすいと考えられる。ネコ咬傷患者の診療に対しては,こうした危険を常に念頭に置き,増悪時には直ちに受診するように説明する必要があると考えた。(皮膚の科学,15: 274-277, 2016)

収録刊行物

  • 皮膚の科学

    皮膚の科学 15 (4), 274-277, 2016

    日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ