パルミトイルピペリジノピペリジンの毒性影響および抗がん効果発現機序の解析

DOI
  • 安藤 さえこ
    名古屋市立大学大学院医学研究科分子毒性学分野
  • 深町 勝巳
    名古屋市立大学大学院医学研究科分子毒性学分野
  • 二口 充
    名古屋市立大学大学院医学研究科分子毒性学分野
  • 酒々井 眞澄
    名古屋市立大学大学院医学研究科分子毒性学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Toxicity and anticancer mechanism of actin of palmitoyl piperidinopiperidine

抄録

デセン酸を初期リードとする新規抗がん物質palmitoyl piperidinopiperisin (PPI) (特許第5237884, 2014年, 特許権者および発明者: 酒々井、飯沼) は in silico 解析において転写因子STAT3の2量体形成を阻害することで転写活性を抑制することが予測されている。本研究ではPPIの毒性検証のため、雌ヌードマウスに50 mg/kg PPI腹腔内投与を行った。実験期間を通して各群間の体重に有意差はなく、食道、胃、十二指腸、膵、大腸、肝、脾、腎、副腎、肺、心、卵巣、子宮、骨髄を組織学的に観察したところ、毒性所見は認めなかった。急性毒性試験では500、1000および2000 mg/kg PPIを雌雄SDラットにそれぞれ単回強制経口投与し14日間観察した。主な毒性所見として肝細胞の脂肪変性、2000 mg/kg投与群での食道上部の潰瘍と粘膜下の炎症像を認めた。1000~2000 mg/kg雄、1000~2000 mg/kg 雌では胃の拡張、1000~2000 mg/kg雌雄で下痢が認められた。LD50は雄で1000 mg/kg、雌で500 mg/kgであった。ヒト大腸がん細胞株SW837でPPIは、0.15~2.5 µMで用量依存的にSTAT3転写活性を阻害した。さらに、PPI (50 mg/kg, ip) は雌ヌードマウスに移植したHT29細胞株に対して腫瘍縮小効果を発揮した。その機序を検索するため、CD34抗体を用いて摘出した腫瘍組織を免疫染色し、血管数をカウントした。PPI投与群で41%の有意な血管数の減少を認めた。さらに鶏卵漿尿膜法を用いて、PPIの血管新生抑制効果を検証した。PPIは0.2~5.0 µMの用量でばく露領域の血管長、血管数、および血管、分岐数をそれぞれ用量依存的に抑制した。以上の結果から、PPIは転写因子STAT3の転写活性阻害によりSTAT3に制御される分子を介し、最終的に血管新生抑制に働いている可能性がある。50 mg/kg腹腔内投与では、PPIはマウスに重篤な副作用を示すことなく抗がん効果を発揮する。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680521551104
  • NII論文ID
    130005260831
  • DOI
    10.14869/toxpt.43.1.0_p-27
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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