魚コラーゲンペプチドの骨欠損部再生への有用性

DOI オープンアクセス
  • 山田 志津香
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 齲蝕学分野
  • 池田 毅
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 齲蝕学分野
  • 山本 耕平
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 齲蝕学分野
  • 栁口 嘉治郎
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 齲蝕学分野
  • 林 善彦
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 齲蝕学分野

書誌事項

タイトル別名
  • The Efficiency of Fish Collagen Peptides for Bone Regeneration

この論文をさがす

抄録

<p> 目的 : 超高齢社会の到来により, 骨粗鬆症による骨折が社会問題となっている. 歯科領域においては, インプラント埋入部の骨の厚さや強度不足が治療の妨げとなることがある. このため, 骨再生剤の研究開発が急務となっている. 牛海綿状脳症 (BSE) や口蹄疫などの人畜共通感染症の対象動物である牛や豚由来の生体材料の代替物として, 魚の皮や骨由来のコラーゲンペプチド (FCP) は, その可能性がある. 今回, 顎骨の骨欠損部へ直接塡塞した後, 骨再生過程を観察し, FCPの骨再生剤としての有用性を検討した.</p><p> 材料と方法 : ラットに腹腔内麻酔の後, 下顎骨下縁とオトガイ孔の間の骨面にラウンドバーを用いて, 左右にそれぞれ2カ所ずつ円筒形の骨窩洞を形成した. 左右1対の窩洞内を滅菌生食水で洗浄, 止血後, 窩洞にFCPを緊密に塡入し, 皮弁を縫合した. 残り1対の窩洞は対照群とした. 術後1, 4, 8週間および12週間経過時におのおののラットを全身麻酔下で灌流固定後, 顎骨試料は上昇系列のエタノールで脱水し, エポキシレジンに包埋した. 準超薄切片はトルイジンブルー染色を施した後, 光学顕微鏡下で観察・撮影を行った.</p><p> 結果 : 術後1週目では, FCP塡塞群・対照群ともに炎症性細胞浸潤はほぼ消失していたが, FCP塡塞群は脈管系の新生が旺盛で, また線維芽細胞の増殖も認めた. 対照群は脈管系の新生を認めるが, 細胞成分はまだ少なかった. 4週目では, FCP塡塞群において窩洞周辺部および深部において骨芽細胞の増殖が認められた. また窩洞入口に島状の新生骨の形成が認められた. 対照群ではFCP塡塞群同様, 窩洞周辺部および深部で骨新生はみられたが, 窩洞入口中央では骨性修復を認めなかった. 8週目においては, FCP塡塞群でかなり骨性修復が進行していたが, 対照群では窩洞の骨性閉鎖は未完了であった. 12週目では, FCP塡塞群の窩洞入口は層板骨により完全に閉鎖していた. 対照群では窩洞入口は線維性組織による閉鎖がみられたが, 骨性修復は不完全であった.</p><p> 結論 : FCPは早期に骨欠損部の骨性修復再生を促進させることが明らかとなった. BSEなどの感染の危険性がなく安価であるFCPは, 骨再生剤として今後臨床応用の可能性を十分有する有用な材料であることが明らかとなった.</p>

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ