異所性妊娠の臨床像を呈した原発卵巣絨毛癌の1例

書誌事項

タイトル別名
  • A case of primary ovarian choriocarcinoma presenting as ectopic pregnancy
  • 症例報告 異所性妊娠の臨床像を呈した原発卵巣絨毛癌の1例
  • ショウレイ ホウコク イショセイ ニンシン ノ リンショウゾウ オ テイシタ ゲンパツ ランソウジュウモウガン ノ 1レイ

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抄録

<p>卵巣絨毛癌はまれな疾患で,発生学的に妊娠性と非妊娠性に分類される.またhCG高値を示し付属器領域に病変を認める点で,異所性妊娠と類似する.異所性妊娠を疑って手術を行い,術後組織にて非妊娠性卵巣絨毛癌と判明した1例を経験したので報告する.症例は30歳,2経妊2経産で,少量の性器出血を伴う無月経のため前医を受診した.2週間の経過観察中,尿中妊娠反応の陽性が持続する一方で子宮内に胎嚢を認めないため,最終月経から起算して妊娠8週1日に異所性妊娠または流産の疑いで当院紹介となった.初診時,子宮や付属器に胎嚢はなく,ダグラス窩にecho free spaceも認めなかったが,血中hCG値は2269.5 mIU/mlと高値を示した.翌日,血中hCG値が2512.6 mIU/mlと上昇したため,着床部位不明の異所性妊娠として診断的腹腔鏡を施行した.腹腔内に出血はなく,両側卵管は正常で右卵巣に約2 cm大の腫瘤を認めた.腫瘤部を切開すると肉眼的に血腫と絨毛様の組織を認め,右卵巣妊娠と判断し右卵巣部分切除を施行した.術後の病理診断で正常の絨毛組織が認められず,右卵巣絨毛癌と診断した.胸腹部CTで転移像は認められず,子宮内病変の有無や右卵巣内の残存病変と他の胚細胞性腫瘍の存在を確認する目的で,子宮内容除去術および腹腔鏡下右付属器摘出術を施行したが,残存病変や胚細胞性腫瘍は認められなかった.MEA療法(Methotrexate+Etoposide+Actinomycin D)を4コース施行し,現在は経過観察中である.本症例では胚細胞成分が検出されず,絨毛癌成分のみであったため,2年前の妊娠を先行とした妊娠性卵巣絨毛癌と非妊娠性卵巣絨毛癌の可能性が考えられた.そこで腫瘍組織と患者血液からDNAを抽出し,short tandem repeat(STR)多型ローカスのアリルパターンを比較した.解析した全ローカスで,腫瘍は患者血液と異なるアリルを有しておらず,非妊娠性卵巣絨毛癌と考えられた.異所性妊娠を疑う症例で卵巣に病変が認められる場合には,組織学的診断は重要であり,まれな疾患ではあるが卵巣絨毛癌も念頭に入れ対応する必要があると考えられた.〔産婦の進歩68(4):381-388, 2016(平成28年10月)〕</p>

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