中学校家庭分野実践論文にみる教育評価の現状と課題

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  • Current status and issues of educational evaluation seen in junior high school home field practice paper

抄録

1.研究の背景及び目的<br>本研究の目的は、中学校家庭分野における「家族」教育を対象とした実践論文より、教育評価についての現状と課題を把握し、俯瞰的な見取り図を得るための基盤を作ることにある。教育評価に注目することで、教員の「家族」教育に関する授業の傾向を明確にし、課題を見いだすためでもある。そのための手がかりとして、全国中学校技術・家庭科研究会の機関誌『理論と実践』に掲載された家族教育に関する実践論文のテキスト分析を行い、家族教育のメカニズムについての検討を行う。今日、家族の在り方について、家庭科教育ではどのように実践が求められているかという議論がなされている。本田(2009)や高橋(2015)においては、「家庭が大切だ」という学習指導要領や教科教育の方向性に対する、批判的立場が読み取れる。家庭科教育の領域においても、片田江(2010)は、家庭科教員が抱える実践課題の背景を明らかにし、濱崎(2013)においても、「家族」知のリアリティ構築を目指すために、その捉え方の転換を促す実践の可能性を示した。これらの「家族」教育の問題点として、他領域からの印象や個別の背景事例研究に留まっている点である。そこで、永田ら(2015)の調査では、GTA理論に基づき、実践論文のテキスト分析を行っている。分析では、27のカテゴリーに分類され、また、「生徒に求める資質・能力」に関する記述、「内容」に関する記述、「生徒の成果」に関する記述の3つからなる構造があることがわかった。そのため今回の分析では、27のカテゴリーのうち、「評価」に関するカテゴリーに着目し、「家族」教育の現状と課題を把握することで、一般的なレベルでの課題を明らかにすることを目的とする。<br><br>2.研究方法<br>全日本中学校技術・家庭科研究会の機関誌『理論と実践』を分析対象とした。その中でも今回は、現行学習指導要領期2009年から2014年に発行された中に掲載されている19本の実践論文を対象に、テキスト分析を行う。具体的には、GTA理論に基づき、テキストをカテゴリー化する。次に、「評価」に関するカテゴリーに着目し、各論文における「評価の目的(診断的評価、形成的評価、総括的評価)」、「評価の方法」、「評価規準(なにを評価したか)」「評価基準(どのような姿を根拠に研究成果としたか)」の観点で解釈を行うために、分析シートを作成し、解釈を行う段階と、二段階で分析を行う。<br><br>3.結果と考察<br>GTA理論に基づき、『理論と実践』に掲載されている19本の実践論文を分析した結果、「授業のテーマ」、「授業形態」、「生徒への指示」、「評価」、「教師の視点」、「その他」の6つの類型、計27カテゴリーに分類することができた。そのうち、「評価」に関するカテゴリーについては、「評価の対象」、「評価の材料」、「評価の段階(診断的評価、形成的評価、総括的評価)」、「生徒の変容」のカテゴリーに分類できた。また、「評価」に関するテキストについて分析シートによる分析の結果、「評価基準」の根拠となる要因において、「家族」教育の課題を見出すことができた。その根拠としては、(1)学習指導要領解説編及び教科書、(2)専門家やゲストティーチャーの指導・助言、(3)教師の既有知識、(4)教師特有の家族観、などがあげられる。<br>今後は、「評価基準」の根拠となる要因について検討を行う予定である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595823360
  • NII論文ID
    130005286977
  • DOI
    10.11549/jhee.59.0_23
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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