九州北部で2014年5月下旬から1週間継続した黄砂期間の硝酸塩の越境輸送のモデル解析

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タイトル別名
  • Numerical Analysis of Trans-Boundary Transport of Dust-Nitrate during the Long-Lasting Yellow Sand Episode Observed over the Northern Kyushu Area in Late May—Early June 2014
  • キュウシュウ ホクブ デ 2014ネン 5ガツ ゲジュン カラ 1シュウカン ケイゾク シタ コウサ キカン ノ ショウサンエン ノ エッキョウ ユソウ ノ モデル カイセキ

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抄録

<p>黄砂時には、硝酸塩 (NO3) が高濃度になることが知られている。我々は福岡市近郊で1時間の高分解能で微小(粒径2.5 μm以下の粒子でPM2.5と記す)と粗大(粒径2.5–10 μmの粒子でPMcと記す)モードのNO3と0.5–10 μmの個別粒子数濃度の連続観測を行い、黄砂とともに微小と粗大モードのNO3の濃度レベルと時間変化の詳細な観測とモデル解析に成功した。観測からは微小と粗大NO3の重量比はほぼ1 : 3で、粗大NO3/PMcの重量比は5–8%に達し、両者の間にはR=0.87の高い相関関係が見られた。これは黄砂粒子の表面にHNO3が不均質反応で取り込まれ、主にCa(NO3)2として越境輸送されるためと考えられる(以下、黄砂に取り込まれたNO3をNITDと記す)。このダストとの不均質反応過程を含む化学輸送モデルを用いてシミュレーションを行い、観測されたNO3の日変化が再現できた。モデルによるソース・レセプター解析結果は、福岡に到達する時点では、微小NITD2.5と粗大NITDcの70–80%が北京・華北平原から上海にかけての大規模な大気汚染発生源のNOxに起因し、日本国内寄与は11%以下であった。観測とモデル解析から、不均質反応により黄砂に取り込まれたNO3濃度の増加量は、粗大NO3の方が多いが、微小NO3の高濃度化にも影響があり、観測された微小NO3の時間変化はNITD2.5を入れないと再現できなかった。これは微小黄砂表面での不均質反応で生成されるNO3も、PM2.5大気汚染に対して重要であることを示している。</p>

収録刊行物

  • 大気環境学会誌

    大気環境学会誌 51 (4), 181-189, 2016

    公益社団法人 大気環境学会

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