腫瘍随伴症候群と考えられた視神経障害を伴う眼窩炎症の1例

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  • Bilateral Orbital Inflammation with Optic Neuropathy as a Paraneoplastic Syndrome Associated with Non-small Cell Lung Cancer

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抄録

腫瘍随伴症候群としての眼窩炎症の報告は極めて少ない.腫瘍随伴徴候を呈する肺癌患者に発症した,視神経障害を伴う両側の急性眼窩炎症を経験した.78歳男性.8か月前に肺腺癌と診断されて化学療法を受け,3か月前に完全寛解を得ていた.両上下眼瞼の浮腫,結膜充血浮腫,眼球突出を呈し,矯正視力は右眼(0.9)左眼(0.2)であった.眼窩MRIでは外眼筋の軽度腫大,左視神経の軽度の炎症を示す所見がみられた.全身検査の結果,C-reactive protein上昇,連銭形成を伴う貧血,ポリクローナルな高γグロブリン血症があり,血清interleukin (IL)-6が高値であるとともに,縦隔リンパ節に肺癌再発が確認された.併発した腫瘍熱に対してPrednisolone 20 mgを開始したところ,すみやかに眼窩炎症は消褪し,視力も回復した.再発肺癌に対する化学療法は部分寛解に留まったが眼窩炎症の再燃はなかった.<br>腫瘍に対する免疫応答により誘導された,多彩な炎症性サイトカインによる炎症,及び異常免疫の賦活化の結果,自己炎症性疾患として眼窩炎症が発症したと考えた.原因不明の眼窩炎症には腫瘍が随伴していることがあり,本例のようにIL-6高値,あるいは高IL-6血症を示す特徴的血液学的所見が有用である可能性がある.

収録刊行物

  • 神経眼科

    神経眼科 33 (4), 370-378, 2016

    日本神経眼科学会

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