左心室駆出率が保たれた周産期肺水腫症例と周産期心筋症症例の検討

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Pulmonary edema with preserved left ventricular ejection fraction in the peripartum period vs. peripartum cardiomyopathy : a single center experience

この論文をさがす

抄録

<p> 背景および目的 : 周産期心筋症は妊娠最終月から分娩後5カ月までに発症する左心室駆出率45%未満の心筋疾患で, 本邦では約2万分娩に1例と発症は稀である. 近年, 従来の定義の周産期心筋症に加え, 左心室拡張機能障害により心不全をきたす周産期心筋症症例が報告されている. 左心室駆出率が保たれた (preserved ejection fraction ; pEF) 周産期肺水腫と従来の定義の周産期心筋症の当院における発症状況と臨床背景について比較検討した. </p><p> 結果 : 当院ではこの10年 (7522分娩) で, pEF周産期肺水腫7例と周産期心筋症5例の発症を認めた. これらの臨床背景を比較すると, pEF周産期肺水腫群にのみ2例の輸血施行を認め, 一方で多胎, 妊娠高血圧腎症の合併は両群で同等であった. 発症時の心エコー指標は周産期心筋症群で左心室拡張末期径が有意に高値となっていた. pEF周産期肺水腫症例はいずれも利尿薬, 酸素投与のみにて数日で自覚症状が改善し, 周産期心筋症症例は全例標準的な心不全治療により1年以内に左心室収縮機能, 心不全症状ともに軽快した. </p><p> 結論 : 近年周産期心筋症発症には切断プロラクチン, sFlt1などの関与が指摘されている. 本検討でもsFlt1高値となることが報告されている双胎, 妊娠高血圧腎症を合併した症例が多く含まれ, pEF周産期肺水腫および周産期心筋症いずれの発症にも関与している可能性が示唆された.</p>

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 48 (2), 152-157, 2016

    公益財団法人 日本心臓財団

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ