エナメル質の微細亀裂に対する各種知覚過敏抑制材の封鎖性

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  • Sealing Ability of Enamel Crack Using Various Dentin Desensitizers

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抄録

<p> 緒言 : 日本では高齢化が進んでいるが, 8020運動などの普及活動や歯科治療の発展により, 国民1人当たりの残存歯数は増加している. それに伴いう蝕や歯周病以外の非う蝕性疾患, 特に, 実質欠損を認めず, 知覚過敏症を呈する患者が増加している. その原因の一つとしてエナメル質の微細亀裂 (以下, エナメルクラック) が考えられる. 健全歯のエナメルクラック発生率は, 40歳以降では95%を超えるとの報告もある. 筆者らは即効性や簡便性などの点から, 象牙質知覚過敏抑制材 (以下, 知覚過敏抑制材) を用いてエナメルクラックを封鎖することはできないかと考えた. そこで本研究では, 知覚過敏症罹患モデル歯質を用いて, 透過抑制率の測定を行い検討した. また, 知覚過敏抑制材塗布後, 蒸留水と再石灰化溶液に保管することにより, 環境が封鎖性に与える影響についても同時に検討を行った. </p><p> 材料と方法 : エナメル亀裂試料をう蝕のない健全ウシ歯を用いて作製した. Pashleyらの報告に準じて作製した装置を用いて, 試料を装置に接続して内圧が25mmHgになるように規定した. 実験に使用した知覚過敏抑制材として, SUPER SEAL (SS), MS Coat F (MS), Nano Seal (NS), Teethmate Desensitizer (TD), G-Premio BOND (GP) を用いた. 各知覚過敏抑制材を塗布後, エナメルクラックの透過抑制率を測定した. 測定後, 試料を蒸留水中 (DW群) または再石灰化溶液 (RS群) に保管し, 1週間後, 1カ月後ならびに3カ月後にもエナメルクラックの透過抑制率を測定した. </p><p> 結果 : SS, TD, NSのDW群では, 塗布直後の透過抑制率に比べ, 1, 3カ月後の透過抑制率は有意に高い値を示した. SS, NSのRS群では, 塗布直後の透過抑制率に比べ, 1, 3カ月後の透過抑制率は有意に高い値を示した. TDのRS群では, 塗布直後の透過抑制率に比べ, 3カ月後の透過抑制率は有意に高い値を示した. MSのDW群, RS群では, 塗布直後の透過抑制率に比べ, 1週間後, 1, 3カ月後の透過抑制率は有意に高い値を示した. GPのDW群, RS群ともに塗布直後より高い封鎖性が得られたことにより, 1週間後, 1, 3カ月後と比べ有意差は認められなかった. </p><p> 結論 : 以上より, 各知覚過敏抑制材において効果発現の時期などに差はみられるものの, 繰り返し塗布することにより効果が表れることが示唆された.</p>

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