健常若年女性に対する胸背部への徒手的圧迫刺激が自律神経活動,体表温度の変化に及ぼす影響

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抄録

【はじめに,目的】疼痛に関する有訴者数は,女性が多く(平成19年国民生活基礎調査)痛覚闘値や痛覚刺激による耐性が低いと言われている(千田ら2004)。自律神経の反応は,慢性疼痛との関連が深く,発汗異常,皮膚温の変化と交感神経の機能異常が関与している。川村ら(1999)は,健常若年者の自律神経活動の性差を比較検討し,女性の循環動態の調節は副交感神経との関連が強いと報告している。理学療法では,胸椎のマニピレーションが指先の皮膚温を上昇させ,軽微な圧迫刺激が遅く鈍い痛みを特異的に抑えることから,胸背部への体性感覚入力が自律神経活動に影響を及ぼす可能性がある。【方法】対象は,健常成人女性10名とした。測定条件は,室温25℃前後で対象者を背臥位とし,メトロノームを用いて呼吸数を12回/分で行うよう指示した。測定項目は,体表温度,心電図とした。胸背部への徒手的圧迫刺激は,簡易的体圧・ズレ力同時測定器プレディアMEA(molten)を用い,右第2-4胸椎棘突起の1横指下外側に圧力センサーを接着して50mmHgに調整した。体表温度は防水型デジタル温度計SK-250WP(佐藤計量器製作所)を使用し,右中指指尖で測定し,刺激中の最高値を代表値とした。心電図の測定は,心拍ゆらぎ測定機器Mem-calca(Tawara)を使用した。心拍変動解析は,R-R間隔の変動をCVRR,0.04~0.15Hz(低周波数域帯,LF),0.15~0.40Hz(高周波数域帯,HF)として行った。自律神経活動の指標はTotal Power(TP)が自律神経全体の活動,LFが心臓交感神経と副交感神経活動,HFが副交感神経活動,CVRRが迷走神経活動,LF/HFが交感神経活動とされている。測定プロトコールは,圧迫前の安静10分(以下,圧迫前),胸背部圧迫10分とした。統計学的分析はSPSS22.0(IBM)用いて圧迫前後の比較を対応のあるt検定を行い,有意水準5%未満とした。【結果】TPは圧迫前1899.8±1228.0から圧迫後2840.3±1609.1と有意に上昇した(p<0.01)。CVRRは圧迫前4.5±1.52から圧迫後5.2±1.80と有意に上昇した(p<0.05)。LFは圧迫前556.0±375.0から圧迫後770.3±444.7と有意に上昇した(p<0.05)。右手指指尖の皮膚温はBL32.2±2.51から最高温度32.7±2.17と有意に上昇した(p<0.05)。【結論】健常若年女性に対する胸背部への持続的圧迫刺激は迷走神経活動の上昇と相対的な交感神経活動抑制状態となり,皮膚血管が拡張し皮膚温は上昇した。

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  • CRID
    1390001205577322880
  • NII論文ID
    130005417627
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0656
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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