訪問リハビリテーション利用者の栄養状態について

DOI
  • 吉松 竜貴
    東京工科大学 医療保健学部 理学療法学科
  • 大沼 剛
    板橋リハビリ訪問看護ステーション リハビリ推進センター株式会社
  • 阿部 勉
    板橋リハビリ訪問看護ステーション リハビリ推進センター株式会社
  • 鈴木 陽一
    板橋区役所前診療所

書誌事項

タイトル別名
  • ―血液検査値を含めた検討―

抄録

【はじめに,目的】栄養状態はリハビリテーション(リハ)を効果的かつ低リスクで進めるために重要な全身状態であるとして注目が高まっている。しかし,これまでに地域在住の要支援・要介護高齢者の栄養状態に関する報告は散見されるが,訪問リハ利用者を対象とした報告は我々の知る限りみあたらず,閉じこもりがちな要支援・要介護者の栄養状態は依然として不透明である。また,地域在住高齢者に関する栄養評価は,スクリーニング手法や身体計測による簡易的なものが多く,血液検査値などから詳細を検討した報告は少ない。そこで,本研究の目的は,訪問リハ利用者の栄養状態について血液検査値を含めた詳細を明らかにするとともに,在宅環境において用いられることの多い簡易栄養評価が対象の動作能力を推し量る上で有用かどうか明らかにすることとした。【方法】都内某訪問看護事業所の訪問リハ利用者のうち,連携先の某診療所から往診を受けている86名を本研究の対象とした。このうち,以下に示す各種評価データと血液検査値のいずれも収集することができた29名を組み入れた。さらに,検査期間中に明らかな全身性の炎症所見を認めた5名を除外した24名(男性14名,女性10名,平均年齢79.5歳)について分析した。評価項目は,血液検査値の他,認知機能(Mental Status Questionnaire:MSQ),握力,基本動作自立度(Bedside Mobility Scale:BMS),抗重力動作能力(Short Physical Performance Battery:SPPB),日常生活自立度(Functional Independence Measure:FIM),身体計測値(Body Mass Index:BMI,下腿周径),簡易栄養評価(Mini Nutritional Assessment:MNA),身体活動量(Home-based Life Space Assessment:Hb-LSA)とした。血液検査値は,利用者の担当往診医より,定期検査として採集したデータが提供された。種々の血液検査値のうち,蛋白代謝の指標である血清アルブミン値(Serum Albumin:Alb)に着目した。統計学的検討として,第1に,BMI,下腿周径,MNA,Albによる栄養状態の判定を記述統計学的にまとめた。第2に,BMI,下腿周径,MNA,AlbとMSQ,握力,BMS,SPPB,FIMとの相関関係をSpearmanの相関係数により検討した。【結果】BMIが18.5 kg/m2未満だったのは8名(33.3%),下腿周径が31 cm未満だったのは11名(45.8%),MNAの総合評価値で「低栄養のおそれあり」と判定されたのは4名(16.7%),Albが3.8 g/dL未満だったのは14名(58.3%)であった。BMIは各種動作能力との間に0.5未満の弱い相関しか認めなかった。下腿周径とMNAはBMS,FIMとの相関が0.7以上と強かった。Albも,各動作指標との関係が強かったが,特にBMSとの相関が0.8以上と強かった。【結論】訪問リハ利用者の約半数は低栄養リスクに晒されている可能性がある。基本動作能力との関連が強いことから,定期的に血清アルブミン値を評価することは訪問リハにおいても有用であることが示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680554538624
  • NII論文ID
    130005418489
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.1433
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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