臨床における極超短波治療器とその周辺の機器と人に対する電磁場環境の安全管理について

DOI
  • 高木 峰子
    神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 川村 博文
    甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科
  • 鈴木 智高
    神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 菅原 憲一
    神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 鶴見 隆正
    湘南医療大学リハビリテーション学科理学療法学専攻

抄録

【はじめに】我が国では,極超短波治療器(以下,マイクロ)は,深部温熱療法として活用されている。しかし,マイクロは,電磁波を照射させて用いるため,患部のみならず,それ以外の場所にも照射してしまう欠点がある。そのため,マイクロに対する安全性について,臨床現場を想定した基礎研究は,既に報告されている。一方,臨床現場における使用状況についての検討は,アンケート調査のみで,実際の臨床現場を調査した報告は渉猟するも見つからない。そのため本研究では,マイクロを使用している施設において,マイクロからの電磁波がもたらすその周辺の機器と人に対する電磁場環境について,臨床現場を調査したので報告する。尚,本研究は日本理学療法士学会の研究助成を受けて実施した。【方法】神奈川県横浜市と横須賀市の医師会ホームページからリハビリテーション科が記載されている病院と診療所より,本研究への協力が得られた3施設を対象とした。調査方法は,診療中の様子を1時間見学し,実際にマイクロが使用されている状況を記録したうえで,診療時間後に同じ状況を模擬的に設定し,調査項目であるマイクロとその1.5m以内に配置されている機器との距離とその電磁場環境,マイクロとスタッフが1.5m以内の距離に30秒以上滞在した位置とその電磁場環境を測定した。電磁場環境の測定は電磁界測定装置(NARDA S.T.S社製EMR-300)を用い,60秒間の電場の平均値を求めた。【結果】マイクロの使用状況は,治療時間10分,出力は施設により異なり,60,80,100Wであった。マイクロから1.5m以内に配置されていた機器があった施設は,全施設であった。その機器の種類は,干渉波,SSP,電気ホットパックであり,全て物理療法機器であった。機器との距離の中央値は,0.9m(0.7~1.5m)であり,電場の平均値は,27.24±6.04 V/mであった。機器に対する電磁場環境は,先行研究で示されている機器の異常を示す高い電場ではなかった。また,マイクロから1.5m以内に30秒間滞在したスタッフがいた施設も全施設であった。その距離の中央値は,1.2m(0.7~1.5m)であり,電場の平均値は,34.35±34.85V/mであった。滞在理由は,周辺機器の設置・片づけと患者との会話,待機場所であった。出力が100Wでマイクロとの距離が近い70cmの滞在位置で高い値を示した。この電磁場環境は,世界非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が定めている公衆に対する電磁場環境の基準値を超えていた。【結論】マイクロからの電磁波がもたらすその周辺の機器と人の電磁場環境について,マイクロと1.5m以内の機器と人に対する電場の測定を実施した。1.5m以内に配置されている機器であっても,電磁波の影響を強く受けていなかった。人に対しては,100Wの使用で70cmの位置ではICNIRPの基準値を超えていたことから,スタッフに対し,電磁波に関する啓発が必要であると考えた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680556780800
  • NII論文ID
    130005418768
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.1727
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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