タンデム授乳―0歳と2歳の娘に授乳するニホンザルの母
書誌事項
- タイトル別名
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- Tandem-nursing observed in a 10-year-old Japanese monkey mother with her 0-year-old and 2-year-old daughters
抄録
<p>双子などの同腹の複数の子に母が同時授乳することは、哺乳類で一般的なことである。しかし、母が年齢の異なる子どもに同時に、あるいは別々であっても同時期に、授乳することは極めて例外的である。勝山ニホンザル集団で、9歳のメス(2006年生まれ)が同年に出産した0歳の娘(2015年5月7日以降、6月中旬ころまでに誕生と推測。)と同時に2歳になる娘(2013年5月31日-6月1日誕生)に対して同時授乳、あるいは、一頭ずつを別々に授乳することが、2015年7月から8カ月間継続している(2016年3月24日現在)。2歳になる娘は、妹が生まれる約1-2カ月前の時点、すなわち、1歳10カ月のとき(2015年3月29日)に、母の乳首を吸っているのが確認されていた。同時授乳が初めて確認されたのは、2歳娘が2歳1カ月半(2015年7月26日、最後の授乳目撃から約4カ月後)であった(それまでの期間に同時授乳があったかどうかは不明)。初回の観察時には、2歳娘の口によるnipple-contactや手で乳首を触ったり、ひっぱったりする行動をしても、母ザルの拒否的行動や攻撃的行動は見られなかった。その後も、2歳娘のnipple-contactに対して、母ザルが手で軽く押しやるなどの行動を示すときもあったが、8カ月間にわたり概ね許容的であった。初回確認時から、2歳娘は母ザルの右乳首を、0歳娘が左乳首を口に含むことが8カ月間持続している。この乳首の選好性は1頭での授乳のときも変わりなかった。同時授乳のときに、2頭の姉妹の間でのケンカは確認されていない。2016年3月の時点で、2歳娘が母ザルの右乳首をつかみ引っ張った時に、「白い分泌液」が乳頭から出ているのが確認されているので、右乳首の乳分泌は継続していると推測できる。今回の同時授乳の事例は、子ザルの授乳への強い欲求と母ザルの寛容性を考えるうえで、興味深い事例である。</p>
収録刊行物
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- 霊長類研究 Supplement
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霊長類研究 Supplement 32 (0), 52-52, 2016
日本霊長類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680610555904
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- NII論文ID
- 130005418819
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可