日本モンキーセンターにおける飼育霊長類の診療と死因分析、特に周産期新生仔期死亡について

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タイトル別名
  • The medical treatment of the captive primates in Japan Monkey Centre and analysis of the cause of death, during the perinatal neonate period in particular

抄録

<p>日本モンキーセンターは、創立60周年を迎える。公益財団法人として再スタートを切って2年、定款には霊長類に関する総合的な調査研究、保全などとともに、動物福祉に配慮した動物園の設置・運営を掲げる。動物福祉を考えるに当たり、尊厳を伴った健康長寿のためには、日々の診療実態を把握し、不幸にして亡くなった飼育霊長類の死因を明らかにすることが第一歩となる。また、健康寿命伸延のためには、周産期死亡や新生仔期死亡を減らす努力も不可欠となる。平成17年度から10年間分の年報、診療簿および剖検録から、飼育霊長類の頭数、診療件数、死亡頭数、繁殖数、人工哺育頭数、周産期から新生仔期に死亡した個体数および死亡原因の洗出しを行い、死亡率を算出した。なお、本研究では「周産期」はおおむね妊娠中期以降と捉え、「新生仔期」については一律生後28日未満とした。この間、飼育頭数と診療件数はともに増加した。診療実態の把握には、診療科区分を呼吸器科、消化器科、泌尿生殖器科、外傷、寄生虫症、伝染性疾患、神経系、その他に分けて分析した。その他分類(循環器科、皮膚科、眼科、腫瘍科、産科、小児科、検査科、高齢動物医学)の比率が年々増加し疾患の多様化が認められた。死亡頭数では大きな変化はみられなかったが、産科・小児科領域である周産期新生仔期の死亡率は、毎年変動があるものの30%台前後で高留まっていた。この死亡率の増減変動は人工哺育数の推移によく似た結果となった。死因分析では、大きく分けて①流産、死産や出生死亡といった周産期に課題のあるケース、②頭蓋骨折や頭蓋内出血、食害など新生仔期に課題のあるケース、③誤嚥、肺炎、衰弱などのいわゆる小児科医療領域に課題のあるケース、④不明の4つに分類できた。この結果から、妊娠後期を穏やかに過ごせる飼育環境の充実、出産後に群れのトラブル等から母子が自ら避難できるスペースの必要性が裏付けられた。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205633673088
  • NII論文ID
    130005418847
  • DOI
    10.14907/primate.32.0_64_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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