気仙沼市仮設商店街における経営状況と本設の意向

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タイトル別名
  • The temporary store's business conditions and intentions towards reconstruction in Kesennuma
  • - 被災地再建研究グループによる研究 ‐
  • - Studies by the Study Group on Recovery of the Areas Affected by the 2011 Great East Japan Earthquake -

抄録

未曾有の被害をもたらした東日本大震災からおよそ2年が経過した現在、住居や産業施設などの本設が徐々に進み、本格的な復興に向かいつつある。このような中で本設の意向を整理し、復興のプランを検討することは喫緊の課題である。そこで本研究では仮設商店街における本設の意向を対象に考察を行った。対象である仮設商店街はマスメディアによって、観光客やボランティアによる賑わいが取り上げられている。しかし、仮設商店街を構成する商店の業種や規模などは様々であり、こうした店舗が一律に外部客の賑わいを享受しているとは考えがたい。そのため本研究は32の仮設商店に対し、被害状況、震災前後の経営状況、本設の意向についてヒアリング調査を行った。その結果から商店のタイプ分けし、調査者のロールプレイングによる本設のプランに対する検討を行った。<BR> 震災以前における各仮設商店の客層は、全店舗において客層の80%以上が地元客であった。しかし震災後では地元客の割合が80%以上である店舗は1店舗のみであり、ボランティアや被災地観光といった外部客の割合が増加していた。これにともなって、売り上げに店舗間での格差が生じている。震災前と比較して、売り上げが増加したと回答した店舗は9店舗であり、これらの大部分は水産物や気仙沼の特産品を取り扱っている小売店や飲食店であった。一方で減少したと回答した12店舗は、理容店や八百屋、刃物屋といった地元客向けの店舗である。つまり、外部客の需要に対応できた店舗は売り上げを伸ばし、対応できなかった店舗では売り上げが減少している状況にある。<BR> そして本設に関して、多くの店舗で職住分離を希望していた。こうした中で、職住分離を不可と回答した3店舗は全て飲食店であり、不可である理由として、職住分離では通勤が必要なため、営業時間に支障をきたすと回答していた。次に本設後の店舗所有について、大規模経営の店舗は自己所有を望んでいた。これらの店舗は、いずれも本設に対する資金の目途がたっていることに加え、従業員数が多いために広い店舗面積が必要であることや、店独自の外観や店舗設計を求めているため自己所有を希望している。一方で経営主の高齢化が進み、かつ後継者がいない店舗では、いずれも資金の目途がたっておらず、経営の継続を不安視している。この結果、自己所有ではなく、共同建て替えや貸店舗を望んでいた。<BR> このような経営状況、本設の意向を踏まえて、大型店誘致、商店街再建、個別再建、共同建て替え、テナント入居の6プランについて、ロールプレイングによって商店タイプごとに対応可能であるか検討を行った。その結果、本設に対する意向が複雑化おり、この複雑化は震災以前からの経営状況、震災後の客層変化による経営変化に加えて、仮設商店街の運営に対する不満も原因となっていた。このように、本設の意向が様々であるため、多様な本設のプランを模索する必要がある。また、意向の複雑化を防ぐために、仮設商店街運営の見直しが必要となっている。<BR> なお、本研究は東北大学災害科学国際センター特定プロジェクト研究「津波被災地の商業機能モニタリング調査」(研究代表者:磯田弦)として行った。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205695963904
  • NII論文ID
    130005457245
  • DOI
    10.14866/ajg.2013s.0_134
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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