ナノ粒子の胎仔期曝露が出生仔の脳血管周辺細胞へ及ぼす影響

DOI
  • 小野田 淳人
    東京理科大学大学院薬学研究科衛生化学研究室 栃木臨床病理研究所
  • 梅澤 雅和
    栃木臨床病理研究所 東京理科大学総合研究機構戦略的環境次世代健康科学研究基盤センター
  • 井原 智美
    栃木臨床病理研究所
  • 菅又 昌雄
    栃木臨床病理研究所
  • 武田 健
    東京理科大学総合研究機構戦略的環境次世代健康科学研究基盤センター

書誌事項

タイトル別名
  • Effects of maternal exposure to nanoparticles on brain perivascular cells in offspring mice

抄録

【背景・目的】ナノ粒子は比表面積が大きいため、質量あたりの比活性が大きい物質である。また、粒子径が小さいことにより、曝露部位から他の組織へ移行しやすいことが報告され、胎仔の脳への移行も確認されている。我々は胎仔の脳への移行経路の一つと考えられる脳血管周辺、特に脳血管周囲マクロファージ (PVM) に焦点を置いた。PVMは、微小血管と脳実質の境界空間に存在し、血管からの異物や病原体、実質内の老廃物処理を担う細胞である。本研究では、カーボンブラックナノ粒子 (CB-NP) と酸化チタンナノ粒子 (TiO2-NP) の胎仔期曝露がPVMとその血管に接触するアストロサイトに及ぼす影響を、組織学的解析を中心に検証する。<br>【方法】凝集粒子を除去した一次粒子径14 nmのCB-NP (95 µg/kg体重) 、あるいは一次粒子径21 nmのルチル・アナターゼ型のTiO2-NP (8 mg/kg体重) を、妊娠5、9日目のICR系妊娠マウスに点鼻投与した。6週齢と12週齢の雄性産仔から脳を摘出し、PAS (Periodic acid-Schiff) 染色、電子顕微鏡観察、PAS-GFAP (Glial fibrillary acidic protein) 重染色を行い、組織学的解析を実施した。<br>【結果】PAS染色の結果、CB-NP曝露群において2‐3倍に肥大化したPVM消化顆粒が観察されたほか、PAS陽性PVMの細胞数が有意に減少していた。特に大脳皮質、海馬、視床下部、中脳、小脳、延髄でPAS陽性PVM細胞数の有意な減少を示した。電子顕微鏡観察では、PVM消化顆粒が異常構造を形成し、アストロサイトのエンドフット膨潤化が確認された。PAS‐GFAP重染色の結果、大脳皮質でのアストロサイトのGFAP発現量増加が確認された。このGFAP陽性アストロサイトのエンドフットは肥大した顆粒を持つPVMに接触していた。TiO2-NP曝露群もCB-NP群と同様にPVM消化顆粒の肥大化、GFAP発現量増加が認められた。<br>【考察・結論】ナノ粒子の胎仔期曝露がPVMとアストロサイトに形態変化を引き起こすことを示した。領域別解析の結果、血管密度の大きい領域で特に炭素ナノ粒子の影響を受けることが予想される。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680525300480
  • NII論文ID
    130005468532
  • DOI
    10.14869/toxpt.41.1.0_p-12
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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