ヒトにおける薬剤性嘔吐の予測法としてのラット唾液アミラーゼモデル
書誌事項
- タイトル別名
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- Novel experimental model in rats: Predictability of human emesis
抄録
嘔吐及び悪心は抗癌剤と同様に各種医薬品により認められる深刻な副作用の一つである。特に、嘔吐は患者への負担・苦痛が大きく、患者のQOLを著しく低下させるため、催吐作用のない薬剤あるいは制吐剤の開発が望まれている。しかし、嘔吐のメカニズム及び新規制吐剤開発の研究には動物実験が必須であるが、実験動物として汎用されるラット及びマウスには嘔吐反射がないために、催吐作用あるいは制吐作用が評価できない。一方、嘔吐を示すフェレット、イヌ、サル等は高価かつ取扱いが困難であり、一度に評価できる薬物も限定されるため、評価に時間を要する。また、多くの国では動物権利擁護によって、これらの大動物の使用が制限されていることから、嘔吐研究にラットを用いることは有益である。<br> ラットを用いた嘔吐研究法としては、ヒト、イヌあるいはフェレット等で催吐作用を示す薬物により、カオリン摂取量が増加するpica法が報告されている。しかし、pica法では、薬物投与後の経時的変化を詳細に追跡できないなどの欠点がある。我々は新しい方法として、ラットの唾液アミラーゼ活性が各種催吐剤で増加することを報告した。シスプラチン、アポモルフィン、LiCl、ロリプラムあるいはシブトラミン等の機作の異なる催吐剤により、ラット唾液中のアミラーゼ活性が有意に増加すること、また、これらの増加はヒトで汎用されている制吐剤で抑制されることを確認した。抗糖尿病薬/抗肥満薬であるGLP-1受容体作動薬はイヌ及びサルでは嘔吐を示さなかったが、ヒトでは臨床用量で嘔吐をもたらした。このGLP-1受容体作動薬の嘔吐作用をラット唾液アミラーゼモデルにより検討した結果、臨床用量付近より唾液アミラーゼ活性が増加することを確認した。これらのことから、ラット唾液アミラーゼはヒト特異的に嘔吐を起こす薬物においても、その催吐作用を検出することができることを示唆しており、有用な嘔吐マーカーであると考えられた。
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 41.1 (0), S8-5-, 2014
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205548624768
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- NII論文ID
- 130005468932
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可