肝臓での酸化ストレスによって起こること(2)生理的炎症拡大機構

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タイトル別名
  • Events caused by oxidative stress in the liver (2) Physiological exacerbation of inflammation

抄録

目的 四塩化炭素(CCl4)による肝炎ではPhase Iでラジカルを発生するが、肝臓のCCl4濃度は投与1.5hで最高になり、その後急激に減少する。しかし肝炎はその後拡大し、24h以降に広範な肝臓の壊死を起こす。8h以降のPhase IIではKupffer細胞が活性化され、増悪サイクルが形成されて炎症性サイトカインが放出され、肝炎を増幅するとされる。本研究では、Kupffer細胞の数が大きく減少したNucling欠損マウス(KO)と野生型マウス(WT)との比較からこれを検討した。<br> 方法 KOとWTにCCl4(1ml/kg)を経口投与し、その後の変化を調べた。<br> 結果と考察 WTではPhase IIで血漿AST、ALTは有意に増加した。KOではPhase IIでのAST、ALTともにWTより有意に低く、肝臓の壊死が低下した。血漿中TNF-α,IL-6はWTでは投与後24hで有意に増加するが、KOでは増加しなかった。TNF-αがCOX-2を活性化し、COX-2がTNF-α、IL-1、IL-6を活性化するという増悪サイクルを形成すると考えられる。KOではTNF-αなどを分泌するKupffer細胞が少なく、そのためPhase IIにおける酸化ストレスと肝障害が低下したものと考えられる。以上より、肝炎の拡大機構にKupffer細胞が関与すると考えられる。即ち、一度炎症が惹起されると拡大していくわけで今後抗炎症機構の解明が重要である。なお、本研究は徳島大疾患酵素学研究センター福井清教授との共同研究である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205560783360
  • NII論文ID
    130005470351
  • DOI
    10.11428/kasei.66.0_174
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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