超音波を用いたコモンマーモセットの妊娠診断方法

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タイトル別名
  • Ultrasound scans for pregnancy of common marmoset

抄録

【目的】短時間かつ非侵襲であり、妊娠付随物のパターンや胎仔の成長過程を観察できる超音波診断方法をコモンマーモセットの妊娠診断へ適用し、ストレスが少ない妊娠判別や妊娠経過の観察方法を確立する。【方法】排卵日を血中プロジェステロン濃度の変化によって同定後に、妊娠しているコモンマーモセット2頭について経腹で超音波観察した。観察は通常1週間に1回、妊娠に関連する観察対象物の判別が困難な場合や胎仔の成長が早い期間は週に3回という高頻度で行った。【結果】妊娠初期では15日齢という早い時期にすでに背側と腹側の脱落膜が離れて2重に見え妊娠成立の徴候を確認した。20日齢までに子宮腔内に胎嚢が観察され、30日齢あたりまでは胎嚢が大きくなっていくことで妊娠維持を判断した。この時期には個々の胎嚢を見分けることができるようになり胎仔数を推測することも可能な場合があった。胎齢30日をすぎると卵黄嚢を観察し、35日齢以降では卵黄嚢数からもより確実に胎仔数を推定することができた。60日齢以降では卵黄嚢に隣接して胎仔の心拍を観察し、70日齢以降では胎仔の頭部を明瞭に識別することができた。頭部観察が可能となったのちは大横径を指標にして胎仔の成長を出産するまで観察した。また、妊娠初期の流産ではまた、プロジェステロン濃度測定だけでは判別できなかった妊娠初期の流産の例が観察された。【考察】非侵襲的な手法である超音波による妊娠維持の確認と胎仔成長の観察は、ストレス感受性の高いコモンマーモセットにおいて有効であると考えられ、今回の高頻度観察によって各妊娠期の特徴やその経時的変化を検出できたので、今後観察を有効に行える最小限の回数や時期を決定し、動物や実験者のストレスを抑えられる観察スケジュールの設定が可能となった。また、妊娠初期の流産では、超音波における妊娠徴候の消失よりも血中プロジェステロン濃度の下降が遅い場合があり、超音波診断の有効性が示された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680610681856
  • NII論文ID
    130005471403
  • DOI
    10.14907/primate.28.0_88
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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