参加型農村開発に向けた在来農業の実態把握とフィードバック手法の検討

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Examine for the method of Agricultural labor distribution and its feedback to the project toward the participatory Rural Development
  • ナミビア農牧社会における稲作導入とGPSロガーによる労働分配調査
  • Labor distribution measurement by GPS logger regarded as rice introduction in agro-pastoral society in Namibia

抄録

1. はじめに農村開発プロジェクトでは、在来の農法や農家の労働分配、社会・自然環境をどのように把握し、それらをいかにプロジェクトにフィードバックするかという点が、参加型アプローチが主流になった現在でも主要な課題の一つとされている。発表者はこれまで、南部アフリカの乾燥地域に位置するナミビア共和国において実施されてきた稲作導入に関する研究プロジェクト(科学研究費補助金:代表者 飯嶋盛雄)やJICA/JSTによる地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)プロジェクトに関わり、農牧社会における稲作導入やイネ-ヒエ混作農法の開発に携わってきた。本発表では、プロジェクトで重要視してきた参加型アプローチに向けた農業労働の実態把握に関し、地理学の分野で研究がすすめられてきたGPSロガーによる行動の時空間把握手法の応用可能性について検討を行うことを目的とする。2. 方法2009年12月~2010年3月,2010年5月、2011年1月~3月、2012年12月~2013年3月にナミビア北中部に位置するO村において、現地調査を実施した。調査は村に住み込みで行い、35世帯を対象に経済状況や農業に関する聞き取り調査を実施した。また、2か年の雨季に、村の3世帯の住民にGPSロガーを渡し、農作業時に携行してもらうよう依頼を行った。同時に作業日誌をつけてもらい、作業内容を把握した。そして、それらの結果を世帯の構成員に提示し、労働に関する彼らの認識や稲作導入にともなう労働競合の点での課題などについて把握した。3. 結果と考察(1)大雨と洪水被害の多発:ナミビアでは、2007年から2011年にかけての4回の雨季のうち3回において、通常年をはるかに上回る大雨や洪水が多発し、国家非常事態宣言が発令された。2008/09年には、大雨による農地の冠水が広い範囲で発生し、季節河川周辺では洪水による農地の冠水がみられた。この地域の農家が主食にするトウジンビエは湿害にきわめて弱く、大きな被害が生じていた。そうしたなかで、新聞などを通じた稲作情報の提供などもあり、トウジンビエの被害が大きかった凹地状の地形や湿地でイネを栽培したいという要望が高まっている。(2)農業労働の実態:現地の農家は基本的には家族労働によって農耕を行い、必要に応じてトラクタ耕起や除草のための雇用労働を近隣の住民に依頼していた。農作業のなかで、作付面積や播種の時期にとくに影響をおよぼすものは、ロバによる耕起であった。耕起を行う人が特定の世帯構成員に偏る傾向があり、また道具が1組しかない場合が多く、他の構成員に労働を振り分けることが困難であった。稲作など、新たな作物を導入する場合、耕起における労働競合を最小限に回避する農法を考える必要がある。(3)労働に関する農家の認識:労働に関する結果をデータ取得に協力してもらった世帯に提示し、議論を行った結果、労働の分配に関する農家自身の認識や具体的な悩みが明らかになった。そして、稲作の導入に関しては、播種や耕起の時期ややり方をずらすという点でのフィードバックの可能性が認められた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680673466880
  • NII論文ID
    130005473435
  • DOI
    10.14866/ajg.2013s.0_86
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ