高校地理での学習内容を活用した防災教育プログラムの実践

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書誌事項

タイトル別名
  • A practice of disaster mitigation education program by using the study contents of high school geography
  • 身近な地域の水害リスクを事例として
  • a case study on flood risks in the vicinity of the school district

抄録

I はじめに<br> 日本においては温暖湿潤な気候特性と同時に,沖積平野を中心に市街地が広がっていることから,程度の差はあれ身近な地域において水害に遭遇するリスクが存在する.この水害から自身の身を守るためには,水害リスクの地理的な条件や水害発生のメカニズムに対する理解を促す防災教育が欠かせない.そこで本研究では,水害発生の主要な素因である地形に着目し,地形図の読図やフィールドワークを通して身近な地域の水害リスクを防災マップとして地図化し水害リスクについて考える防災教育プログラムを実践する.本プログラムは,高校地理の学習内容である地形図の読図やフィールドワークの方法,氾濫原や自然堤防などの小地形に関する学習内容を活かすことで実現できる.<br> 本プログラムは,高校地理での学びを活用しながら身近な地域の水害リスクを防災マップの形で表現することで,これまで,抽象的ないしは方法論的な解説に終始しがちであった小地形ないしは地域調査の学習内容を,フィールドワークを通して具体的に理解させることも意図している.ただし,授業時間の制約から,本プログラムを高校地理の授業内で実施することが難しいことから,本研究では,まとまった探究活動の時間に活用できる総合的な学習の時間を活用する.また,本研究では,これまでの防災教育に関する研究において必ずしも十分ではなかった防災教育の効果を検証する分析的視点から,本防災教育プログラムによって高校生がどの程度,教科教育の学習内容と関連付けながら防災に対する理解を深められるかについても検証する.<br><br>II 授業実践と分析資料の概要<br> 本研究で取り組んだ,高校地理の学習内容を活かした防災マップの作成による防災教育の実践とその効果の検証は,授業実践と生徒が取り組んだ課題やアンケート調査データの解析によって構成される.まず,本研究における授業実践は,2011年度に京都府立南丹高等学校(京都府亀岡市)の第2学年で開講された総合的な学習の時間「地域探究講座」において実施された.授業実践は,南丹高校の位置する亀岡盆地が桂川の氾濫による古くからの水害常襲地であることを考え,①「亀岡盆地における小地形と水害」に関する講義や学校周辺の洪水ハザードマップや地形図の読図に関する実習,②行政や自治会の防災担当の方への聞き取りを行ったりするフィールドワーク,③1グループ4~5名のグループ単位で講義やフィールドワークで得られた情報をもとにした防災マップの作成・プレゼンテーションを行った.<br> 高大連携に基づく地域探究講座は,同時に開講された経営学や民俗学,国際理解など全8つの講座のうちのひとつであり,本講座の受講生は第2学年の全生徒199名中22名(11.1%)である.本授業実践は,1年を通して実施される講座のうち2011年7月14・24日,9月15・22日,10月13・27日(計740分)に実施された.また,最終授業日に授業内容に対する理解や関心を問うアンケート調査を実施し,全22名の受講生から回答を得た.本研究では,アンケート調査のデータやプレゼンテーションの際に作成した発表用原稿を分析資料とし本授業実践の評価を行った.<br><br>III 結果・考察<br> 授業実践では,日本における自然災害/水害の特徴とその発生要因を特に高校地理で学ぶ地形用語に焦点をあてて説明し,亀岡盆地における水害の歴史とその地形的特徴について解説した.そこでは,亀岡盆地の水害の特徴を理解させるために1/25,000地形図「亀岡」および『亀岡市洪水ハザードマップ』を活用し,高校地理で学ぶ地形図読図の方法についても講義・実習により修得させた.次に,フィールドワークでは,災害に対する備えや災害発生時に警戒活動や救助・救出活動などを行う警察官や消防団員,自治会防災担当の方からお話を伺ったり,防災備蓄倉庫の見学を行ったりした.さらに,防災マップの作成では,講義や実習,フィールドワークで得られた情報をもとに,地形と水害との関係に関する考察およびフィールドワークで得られた情報を盛り込んだ防災マップを作成するよう指示した.<br> 以上の防災マップ作成の取り組みについて,アンケート調査の結果からは,講義・実習で学んだ内容をフィールドワークで再確認することで,多くの生徒は地域の災害リスクに対して理解を深めていることが示された.また,防災マップ作成やフィールドワークが,地域の災害リスクに関する理解の手助けとなったとする回答が得られた.当日は,授業実践の詳細と同時に,その評価についても報告したい.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694850176
  • NII論文ID
    130005473579
  • DOI
    10.14866/ajg.2014s.0_100007
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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