源生林あしたば含有成分の暑熱ストレスに対する卵巣保護効果
抄録
【目的】畜産業において夏季の暑熱ストレスによる繁殖障害が大きな問題となっている。これは夏季不妊とよばれ,雌家畜においては暑熱ストレスで排卵障害を起こる。体内で活性酸素種が発生し,卵胞発育に密接に関わる顆粒層細胞のアポトーシスを誘発するためと考えられる。源生林あしたばは,八丈島原産のあしたばが耐寒性を獲得した変異種で,機能性飼料をはじめ様々な活用法が期待されている。当研究室の先行研究において,源生林あしたばおよびその特有成分であるカルコン類が暑熱ストレスによる排卵数減少を改善し,さらに過酸化水素刺激からの培養顆粒層細胞の保護効果を示すことを明らかにしている。本研究では,あしたばに含まれる化合物であるクマリン類にも着目し,暑熱ストレスに対する卵巣保護効果での役割を検討することを目的とした。【方法】1)21日齢雌ウィスターラットを対照区(25℃)と暑熱区(35℃)に分け,コーンオイルあるいは各サンプルのコーンオイル懸濁液を1日1回,計5回経口投与した。暑熱暴露を96時間行い,性腺刺激ホルモンを皮下注射し過排卵を誘発させ,卵管膨大部にある排卵卵子数を測定した。2)ブタ卵巣の健常卵胞から顆粒層細胞を調製し,10%血清を含む培地で24時間培養した。その後血清を5%に下げサンプル存在下で24時間培養した後サンプルを除去し,過酸化水素を培地中に添加し,16–18時間後にトリパンブルーにて生存率を測定した。【結果】1)暑熱ストレスによる排卵数減少は,あしたばの黄色い液を粉末化したあしたばカルコンパウダーの投与で有意に改善した。また,パウダー内に含まれる量のカルコン類やクマリン類においても同様な改善傾向がみられた。2)カルコン類,クマリン類はそれぞれ過酸化水素依存的な顆粒層細胞のアポトーシスを濃度依存的に抑制した。以上の結果より,源生林あしたばに含まれるカルコン類とクマリン類の両方が暑熱ストレスからの卵巣保護作用を示すことが明らかとなった。
収録刊行物
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- 日本繁殖生物学会 講演要旨集
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日本繁殖生物学会 講演要旨集 107 (0), OR2-5-OR2-5, 2014
公益社団法人 日本繁殖生物学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680691615872
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- NII論文ID
- 130005475112
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可