ナノ粒子曝露が脳の発達に及ぼす影響―鋭敏なマーカーと毒性学的意義
書誌事項
- タイトル別名
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- Effects of nanoparticle exposure on the brain development - predictive markers and their toxicological implications
抄録
大気中の微小粒子PM2.5の健康影響については疫学レベルで知られているが、近年ではPM2.5の中でもとくに超微小な粒子(ナノ粒子:直径 <100 nm)の健康影響も懸念されている。直径200 nm以下の微小粒子は胎盤通過能を有し(Wick et al. EHP 2010)、胎児に移行して出生個体の主要臓器に長時間残存することが報告され(Takeda et al. JHS 2009)たことから、ナノ粒子の発達毒性が研究されてきた。演者らは、この発達毒性を動物モデル(マウス)を用いて検討する中で、出生仔の脳の血管周囲の細胞群(脳血管周囲マクロファージ及びアストロサイト)が、ナノ粒子の胎仔期曝露に対して感受性高く応答することを捉えた(Onoda et al. PLoS One 2014)。そこで、これらの細胞が示す応答から、ナノ粒子による発達毒性を簡便かつ鋭敏に反映し、ナノ粒子の安全性評価に資するエンドポイントを提示できるのではないかと考え、研究を進めてきた。<br> これまでの研究により、カーボンブラックの妊娠期曝露が、出生仔(6~12週齢:思春期~青年期)の脳のアストロサイト末端足の膨潤化を引き起こすこと、この形態・機能調節に重要な水チャネルAQP4タンパク質の発現を亢進させること、ならびに、脳血管障害時や老齢個体で高発現を示すGFAPタンパク質の発現を亢進させることを明らかにした。また、二酸化チタンナノ粒子曝露群の1日齢(新生仔)マウスの全脳試料の解析で、プロモーター領域のグローバルなDNA低メチル化が示唆されるとともに、Pcdh9遺伝子の有意な発現亢進が認められた。Pcdh9遺伝子の発現異常は一部の脳機能障害との関連が報告されており、毒性・臨床学的意義を検証する必要があると考えられる。<br> ナノ粒子の物性・化学組成の違いと発達毒性プロファイルとの関連や、発達毒性の分子メカニズムは未解明であり、今後の検証課題として残されている。しかし、上述の知見からナノ粒子曝露による脳の発達に及ぼす影響の定量的評価指標が得られると期待され、その意義をさらに検証していきたい。
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 42.1 (0), S12-4-, 2015
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205549515136
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- NII論文ID
- 130005483669
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可