和歌山県における二次保健医療圏ごとの救急搬送受入実態に関する基礎的考察

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タイトル別名
  • A study of acceptability to emergency medical services of each secondary medical district in Wakayama prefecture

抄録

はじめに <br> 和歌山県における救急医療体制は,傷病の程度に応じて初期救急から三次救急までの3区分により整備が進められている。三次救急医療体制は県下全域を対象とし,二次救急医療機関では対応できない重篤な救急患者に24時間体制で対応するもので,救命救急センターがその役割を担っている。二次救急医療は,初期救急医療機関からの転送患者を含め,緊急の手術や入院治療を必要とする重症救急患者に対処するもので,病院群輪番制参加医療機関1)と救急告示医療機関2)がその役割を担う。この二次急医療は,県が作成する医療計画に基づき整備された二次保健医療圏内で完結することが想定されている。<br> しかし実際には,各保健医療圏の公的病院を中心に深刻な勤務医不足が生じており,加えて,休日等にこれらの拠点病院に比較的軽症の救急外来患者が多数受診すること等による勤務医の疲弊が問題視されている。今日においては,こうした状況を改善すべく,二次救急医療機関と地域の診療所が適切に機能分担と連携を行うことで救急医療体制を堅持する仕組みづくり急務となっている。 <br> そこで本研究では,和歌山県において発生した救急事象の概要を把握したうえで,救急医療における医療機関の受入実態を明らかにし,救急医療体制の再考に向けたエビデンスを得ることを目的とする。<br><br> データと分析手法<br> 本研究に用いるデータは,和歌山県広域災害・救急医療情報システムの入力情報のうち,救急搬送に係るデータ(傷病者データおよび交渉データ)である。そのなかから,消防本部名,傷病者番号,救急隊判断程度,緊急度,入電年月日,入電時分,収容医療機関名,収容交渉回数,初診医診断名,初診医分類基準,初診医傷病程度,確定診断名,確定分類基準,確定傷病程度,交渉順,機関コード,交渉医療機関名,選定理由1,選定理由2,交渉開始/終了時分,交渉結果,傷病者収容の可否,未収容理由,交渉者に関する情報を収集し,解析用のデータセットを整備した。<br> 分析対象は,和歌山県内において2014年1月1日から12月31日の1年間に覚知された全救急事象とする。対象の除外基準は,転院,ヘリ転送であったもの,初診医診断名,初診医分類基準,初診医傷病程度,確定診断名のいずれにおいても未記入のため傷病や程度が判別できないものとした。<br> 分析手順としては,先ず,傷病者データから収集した各項目に基づき,どのような種類の疾患がどのような動きをしているのか,救急搬送の特徴について,発生件数,搬送時間,入電の時刻に基づいた診療時間内外の区別,年齢層,疾患,重症度(程度)についてそれぞれ記述する。次に,交渉データを用いて,医療機関への照会回数,受入回数を集計し,二次保健医療圏ごとの受入率を算出する。これらの結果を突合し,各項目間においてどのような関連があるのかを探索的に検討し,和歌山県内の7つの二次保健医療圏について比較検討する。<br><br> 二次保健医療圏における救急搬送時間の比較<br> 消防庁による「救急年報報告」(平成26年)よると,和歌山県は4つの消防本部を除いて,覚知から医療機関収容までの搬送時間が長時間化する傾向にあることがわかる。一部には全国平均を大きく上回る地域も存在する(表1)。長時間化の要因としては,二次保健医療圏を越えた救急搬送や,救急患者の受入拒否による所謂「たらい回し」等が考えられるが,医療機関の受入実態とともに,救急隊の判断によって,時間帯,疾患,重症度によってどのようなアクションがあったのかを実際の救急活動記録のデータ分析により明らかにし,その結果を発表の際に報告したい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671269632
  • NII論文ID
    130005490183
  • DOI
    10.14866/ajg.2015a.0_100128
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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