気象条件の最大化による可能最大降水量(PMP)と可能最大洪水(PMF)の推定

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  • ESTIMATION OF PROBABLE MAXIMUM PRECIPITATION AND PROBABLE MAXIMUM FLOOD THROUGH MAXIMIZATION OF WEATHER CONDUTIONS

抄録

<br><br>近年の豪雨による災害の多発,気候変動による降水量,流量の増加が予測される中,水害リスク分析の最大外力を洪水においても設定する必要性が議論されている.そこで本研究は,日本の直轄河川流域を対象とした「流域規模」と「降雨継続時間」に対応する可能最大降水量(PMP)及びそれから算出される可能最大洪水(PMF)の推定を目指した.研究手法としては,気象モデルWRFを用い,近年発生した台風性,前線性の6豪雨を対象に相対湿度を変化させ,利根川上流域における降雨の時空間分布に与える気象パラメータの影響を考察し,PMPとPMFの推定を試みた.その結果は以下のとおりである.<br><br> (1) 相対湿度は総雨量の変化だけでなく降雨の時間分布に影響を与える.特に,台風性豪雨では相対湿度の増加は,降雨の発生時刻を早くするとともに,一連降雨の前半に新たな降雨ピークを発生させる.これは降雨の初期損失に影響を与え,降雨ピーク時の流出が大きくなり,河川計画上は重要な影響であると考えられたためPMPの時間分布作成に反映した.(2) 12,24,72時間雨量は500~550hPaの気圧面における12~24時間最大水蒸気フラックスとの相関が高い.このため水蒸気フラックスは降雨継続時間毎の最大雨量を推定することのできる有効な指標である.(3) 降雨量と相関の高い水蒸気フラックスと前橋気象官署における地上観測値との関係式を利根川流域の主要豪雨時のJRA55再解析データを用いて作成した.次に前橋気象官署の地上観測値を1901年~2013年について過去最大水蒸気フラックス算定する手法を示した.その結果を用いPMPとその時間分布の推定を降雨成因を考慮して行う手法を提案した.気候変動を考慮したPMPはRCP8.5シナリオの将来気候9ケースの出力値から最大水蒸気フラックスを用いて算定した.(4)複数洪水を対象とした流出計算により現行と気候変動を考慮した可能最大洪水(PMF)を算定する手法を示した.また,PMFは河川整備基本方針のピーク流量を上回る可能性があることを示した.

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  • CRID
    1390282680688309248
  • NII論文ID
    130005491796
  • DOI
    10.11520/jshwr.28.0_100014
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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