農業水利施設による断水時生活用水供給の提案

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Suggestion of domestic water supply by utilizing agricultural irrigation facilities at time of water cut-off

抄録

阪神・淡路大震災や東日本大震災では,水道施設の破損や停電によって長期断水が発生した.東日本大震災以降,自治体ではペットボトルの備蓄や貯水槽の整備を積極的に進めているが,これらの対象は主に飲料水であり,膨大な水量を必要とする生活用水については十分な対策が立っていない.そこで,断水時の生活用水供給施設として農業幹線用水路を活用することの効果を検討した.農業幹線用水路は国内に広く分布しており,住宅街近くを通る水路も多く存在する.生活用水は飲料水に比べて水量が多いため輸送が大きな問題となるが,生活圏の近くを通る用水路であれば,市民が各自で取水することが可能である.また,農業幹線用水路は通水量の面でも十分な能力を有している.本研究では,全都道府県を対象に,断水時に農業幹線用水路で生活用水を供給した場合の受益人数を推定し,その効果を検討した.受益範囲を水路から1,000 mとした場合の受益人数をGIS解析によって推定した結果,本対策の効果には地域差があることが明らかになった.高い効果を期待できる県は東北,中部,四国地方に多く分布し,最も高い効果が期待できる岡山県の受益率(県内人口に占める受益人数の割合)は49%であった.一方,人口が多く,農地面積が小さい都市部では受益率が小さいため,本対策の有効性は低く,他の用水供給対策(給水車,貯水槽,防災井戸,雨水タンクなど)を講じる必要があることを述べた.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205711356672
  • NII論文ID
    130005491927
  • DOI
    10.11520/jshwr.28.0_100092
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ