底面の加熱及び冷却を伴う回転水槽実験

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タイトル別名
  • ROTATING FLUID EXPERIMENT WITH BOTTOM SUBJECTED TO HEATED AND COOLED

抄録

中緯度地域における総観規模の気象は,偏西風の蛇行及び高低気圧の発生や移動に支配されるが,これは傾圧不安定波として解釈される.傾圧不安定波の室内実験としてはFultzやHideが提唱した回転水槽実験が挙げられる.既往の実験の多くでは,3重の円筒水槽を用い,中心に冷水,外側に温水を入れ,中間に位置する水槽内の流体を作業流体とする.この作業流体は側壁を通して温度差が与えられ,かつ回転させることで傾圧帯の大気の流れの特徴を有することが示されている.これはアニュラス型の実験と呼ばれるが,本実験では,既往の回転水槽実験と異なり,冷源,熱源を水槽の側壁ではなく底面に配置した装置を用いた.アニュラス型の実験では冷熱源としての内壁があるため,蛇行の振幅が一定となっているが,本実験装置には内壁がないため振幅が自由な場合の傾圧不安定波が形成される.さらに極域に相当する水槽中央部の挙動についても解析可能となる.  この装置による実験を相互相関法PIV解析及びSR-PIV解析を利用して解析した.以後,地球大気に倣い,半径方向の流速を南北流速,円周方向の流速を東西流速と呼称する.実験条件を,実験開始前の非回転時の水深40mm,水槽の回転数,レーザシート光を挿入する高さ30mmとした.解析の結果,地球上での中緯度地域に当たる帯状領域で水槽の回転と同方向の東西流速が卓越する流れが観測された.この領域は南北方向に蛇行しており,その波数は地球上の偏西風の蛇行と同程度の4から6程度であった.卓越する帯状領域での東西流速の大きさは1分間の平均値にして0.1-0.4mm/sで時間経過によって増減し,負になる場合も存在した.また,東西風速が卓越する帯状領域において,東西方向に交互に正負の渦度が配置することが観測された.これは地球大気における対流圏上層の低気圧,高気圧の配置と類似している.水槽の中心付近の空間平均渦度と卓越する帯状領域の東西流速の時間変化は類似しており,おおむね同期して増減する.この現象と地球大気における極域の現象との比較は,今後の課題としていきたい.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205711400192
  • NII論文ID
    130005491977
  • DOI
    10.11520/jshwr.28.0_100131
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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